●『平成18(ワ)20126 損害賠償等請求事件 商標権 BURBERRY事件』

 今日の昼間は、とても暖っかたですね。会社は、明日(12/28)が仕事納めですので、もう一頑張りです。


 さて、本日は、『平成18(ワ)20126 損害賠償等請求事件 商標権 BURBERRY事件』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061226153603.pdf)について取り上げます。


 本件は、原告の請求が認容され、損害賠償等請求および差止め請求が認められた事件です。



 本件では、久しぶりに商標権に対し並行輸入の抗弁が認められるか否か等が争点の一つになり、この点で参考になります。


 つまり、本件では、

『(1) 並行輸入の抗弁の成否
 (2) 原告の損害額』

の2点が争点になりました。



 そして、東京地裁は、

1 本件各商標権の侵害について
 前記第2の1(4)記載のとおり,被告標章1は,本件商標1と類似し,被告標章2は,本件商標2及び本件商標3と類似している。そして,被告各標章の付された被告商品は,かばん類であって本件各商標権の指定商品と同一である。


 したがって,被告の行為は,指定商品について本件各商標と類似する標章を使用するものであって,本件各商標権を侵害するものとみなされる(商標法37条1号)。


2 争点(1)(並行輸入の抗弁の成否)について

 ところで,被告による本件各商標権の侵害行為は,被告商品の輸入行為ではなく,国内における譲渡行為であるが,被告の主張は,輸入の時点で,前主による並行輸入として商標権侵害の実質的な違法性がない以上,それ以降の後主による譲渡行為は,違法性がないとの趣旨のものであると解される。


 商標権者以外の者が,我が国における商標権の指定商品と同一の商品につき,その登録商標と同一又は類似の商標を付したものを輸入する行為は,許諾を受けない限り,商標権を侵害する(商標法2条3項,25条,37条)。


 しかし,そのような商品の輸入であっても,(1) 当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものであり,(2) 当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものであって,(3) 我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから,当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合には,いわゆる真正商品の並行輸入として,商標権侵害としての実質的違法性を欠くものである最高裁平成14年(受)第1100号同15年2月27日第一小法廷判決・民集57巻2号125頁)。


 上記(1)の要件は,真正商品の意義について商標を付す主体の観点から述べたものであり,商品の真正をいうものである。



 すなわち,(i)外国における商標権者自身が当該商標を付したこと,又は(ii)当該商標が外国における商標権者自身によって付されたものでない場合には,当該商標権者から使用許諾を受けた者が適法に当該商標を付したことが必要である。


 また,上記(2)の要件は,内外権利者の実質的同一性を必要とし,上記(3)の要件は,我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあるという品質に対する商標権者のコントロールを重視するものである。これらの要件は,商標権侵害に対するいわば違法性阻却事由として,被告において主張立証すべき責任があり,いずれの国で当該商標が付されたかは,その前提として被告が主張立証すべきものである。


 被告は,原告が被告各標章を付した旨主張するものの,本件第2回口頭弁論期日において,被告商品がイタリア共和国で製造されて香港経由で日本に輸入されたものであるが,どこの国で商標を付されたかは分からない旨を述べるにとどまり,このほかに,被告商品の商標が付された事実関係にる的確な主張立証をしない。なお,被告は,輸入をした有限会社ブロンクスから,被告商品の輸入許可通知書及びインボイスの提示を受け,バーバリーの表示があるタグにおいて,納入された被告商品の管理番号を確認し,その番号がインボイスの管理番号と同一であることを確認した旨主張し,乙第2号証の1・2及び同第3号証を提出するが,被告商品の輸入許可があったことによって,これに付された被告各標章が上記(1)の要件のとおり適法に付されたものということにはならない。そうすると,上記(1)の要件を認めるに足りない。


 また,だれがいずれの国で商標を付したかが不明である以上,上記(2)及び(3)の要件も認めることはできず,被告商品の輸入行為につき商標権侵害としての実質的違法性を欠くものとはいえないことになる。なお,証拠(甲25〔枝番を含む。〕ないし28)及び弁論の全趣旨によると,イタリア共和国及び香港における本件各商標権に係る商標権者は,いずれも原告であるものと認められる。


 したがって,被告の主張は,失当であるというほかない。



3 争点(2)(原告の損害額)について

(1) 被告による本件各商標権の侵害行為については,過失があったものと推定される(商標法39条,特許法103条)。そして,これを覆すに足りる被告の反証はないから,被告は,商標権侵害により,原告の被った損害を賠償すべきことになる。なお,他人の商標を付した輸入商品を販売するに当たっては,当該商品が前記2の3要件を満たしていることを確認すべき注意義務があり,被告はこれを怠ったものである。


(2) 逸失利益
 被告商品について,販売価格が1万9800円(税抜き),仕入価格が1万2870円(税抜き),販売個数が25個であって,その販売による被告の利益が17万3250円であることは,当事者間に争いがない。被告はその余の控除すべき変動経費を主張しないから,17万3250円が被告の受けた利益の額であり,この同額をもって,原告が受けた損害の額と推定され
る(商標法38条2項)。
(1万9800円−1万2870円)×25個=17万3250円


(3) 弁護士費用
 被告による本件各商標権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,本件にあらわれた一切の事情を考慮して,これを30万円と認める。


(4) 小括
 以上のとおり,原告の損害額は,47万3250円となる。
 17万3250円+30万円=47万3250円



4 結論
 したがって,原告の請求は,民法709条に基づく損害賠償金47万3250円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成18年9月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求並びに商標法36条に基づく被告商品の販売等の差止め及び廃棄請求の限度で理由がある。


 よって,主文のとおり判決する。』


と判示されました。


 被告としては、商標権の侵害の場合、真正品の並行輸入による抗弁は、最高裁判決に従い使えるものの、その前提として、まずは商標権者による真正品であることの立証が必要であるとのことです。



 なお、本事件の裁判長は、東京地裁第47部の高部眞規子裁判官でした。



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