●弁理士会の「水際取締り(税関)に関する研修会」

  今日は、午後から弁理士会の「水際取締り(税関)に関する研修会」に出てきました。


  先週の高部眞規子判事が講師の研修と較べると受講者は少なかったですが、3人の講師の方の説明が実務的で充実しており、「水際取締り」の概略や重要性が良く分り、とても良かったです。


 今日は、本研修で気付いた点のみ書きます。


 水際取締りも、2002年の知的財産基本法の成立から知的財産推進計画の決定を受けて、関税定率法改正を003年から2006年の4年連続改正して保護を強化してきたとのことです。

 
 2003年(15年度)改正では、特許権実用新案権意匠権に輸入申立制度を導入。


 2004年(16年度)改正では、輸出入者、生産者の情報を権利者に開示すると共に、音楽レコードの還流防止を規定。


 2005年(17年度)改正では、権利者による見本検査制度を導入。これにより、外観から侵害判断できない貨物の見本を分解・分析などすることが可能になったとのこと。また、不正競争部防止法違反品も対象になったとのこと。 


 2006年(18年度)改正では、専門委員意見照会制度を導入したとのこと。専門委員は、3名(学者、弁護士、弁理士)により構成され、合議体ではなく多数決で輸入差止申立てを受理、不受理、保留扱いにするかを決定するとのこと。

 また、来年の1月からの施行ですが、不正競争防止法違反品や特許権実用新案権意匠権、商標権などの侵害物品の輸出も対象になるとのことです。


 なお、18年度改正により輸出行為も税関差止め対象になった点は、とても重要とのことです。

 つまり、税関における輸入(輸出)差止めは、裁判所に対する司法手続に比べ、簡易・迅速に侵害品を阻止できるが、その一方、平成18年度改正により来年の1月より輸出行為も発明の実施行為になり、輸出行為も税関で差し押さえ可能となるので、輸出割合いの大きい日本企業の中には、外国企業による日本特許権等に基づく日本税関における輸出差止めの増大を危惧しているからのようです。


 そのため、18年度改正により専門委員意見照会制度を設けると共に、18年7月の通達改正により、特許権等が無効理由があるか否かグレーな場合は、専門委員意見は保留扱いにして、特許庁や裁判所の意見を照会できるようにしたとのことです。


 今日はここまでにします。


 なお、『税関ホームページ』(http://www.customs.go.jp/)の『税関による知的財産侵害物品の取締り』 (http://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/index.htm)に税関に対する実務的な手続が掲載されているとのことです。



追伸;<気になったニュース>
●『米国109 議会が閉会 〜 特許改革法案をはじめ係属法案は廃案〜
http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/ip/news/pdf/061211.pdf

・・・この記事によれば、『特許改革法案を含め第109議会に提出された、上下院に係属している全ての法案は廃案とのこと。知的財産権者協会(IPO)等によれば、特許改革法案は第110議会に再び提出されるとみられるが、次期会期では両院とも民主党が多数派を形成することから、共和党多数派によって109議会に提出された法案と同じものが提出されるかどうかは、現時点で不透明な状況。次期110議会は1月4日に召集される予定。』とのことです。


●『【中国】知財侵害「容認できず」 USTR、議会に年次報告書』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061213-00000008-fsi-bus_all
●『QUALCOMM による特許侵害、ITC が当初の判断を支持』
http://japan.internet.com/allnet/20061213/12.html

●『ウィニー開発者に罰金150万円の有罪判決 京都地裁
http://www.asahi.com/national/update/1213/TKY200612130126.html
●『ウィニー開発者に罰金150万円、著作権侵害を認識』
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061213it02.htm?from=top
●『「ウィニー」裁判、判決要旨』
http://www.asahi.com/national/update/1213/OSK200612130057.html
●『「徹底抗戦する」――Winny開発者、控訴へ』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0612/13/news061.html
●『【続報】金子氏サイドがWinny裁判報告会,「判決には納得いかない,今日中に控訴する」』
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20061213/256811/?ST=network