●CIPOの『第2回セミナー グローバルな市場優位性を目指す標準化

 今日は、午後からCIPOフォーラムの『第2回セミナー グローバルな市場優位性を目指す標準化技術と知的財産経営 標準化競争の激化,パテント・プールを巡る諸問題,知的財産戦略との連携』(http://cipo.jp/articles/seminar20061207.html)に出席してきました。


 色々な先生が講演されたのですが、個人的に良かったのは、最初に発表されたの内閣官房知的財産戦略推進事務局の藤田昌宏次長と、キャノン顧問の丸島儀一先生の講演でした。


 以下、本日のセミナーの当方のメモ書きです。


内閣官房知的財産戦略推進事務局の藤田昌宏次長

 欧州は欧州標準→国際標準で世界市場を支配。携帯電話のGSM方式が良い例。

 日本は標準化の作戦で負けて来た。
 技術的に優れていても標準になるとは限らない。
 例 ビデオデッキのVHS vs ベータ。
  第二世代の携帯電話。 欧州のGSM方式と日本のPDC方式。
  ハイビジョン方式も同じ。

 国際標準で苦労した例。
 発光ダイオードも製造はほとんど日本メーカだが規格に参加してなく不合理な安全基準に。
 ソニーが開発したスイカの非接触ICカードの標準化でも失敗したが、なんとか汎用通信規格として国際標準を取得。

 日本が標準化をリードしている例。
 電気制御機器工業会(NECA)の取組やデジカメのファイルフォーマット等。

 とにかく決まり事(ルール)を決めた者が有利。スポーツが良い例。

 中国では、「三流の企業は製品を作り、二流の企業は技術を開発し、一流の企業は標準を作る」と言われるように、標準の重要性が認識されている。
 中国は、多額のライセンス料の支払いから抜けるため、国際標準案の提案を積極的に行うなど、国際標準化活動への戦略的な取組を行っている。


 
●キャノン顧問の丸島儀一先生

 アナログからデジタルが一番の変革期。
 デジタル化の波。研究開発が標準化に連動しなければ負ける。
 あらゆる商品がデジタル化によりネットワークの端末になる。
 情報交換できなければ意味がない。
 デジタル化により標準が一変。
 今の標準は開発型標準。知的財産との関係が大きい。
 自社の有利な技術が標準に合わないとマーケットに受けいれられない。
 グループ間競争の時代。フォーラム同士の争い。リスクの軽減。
 自分の技術を標準にすれば良い。
 国際マーケットで優位性をとらなければ意味がない。WTO→TBT協定が義務付け。国際標準優先が最大のメリット。
 当初はインパクトがなかった。アメリカも1票しかなかったが中国がWTOに加盟。WTO→TBT協定が義務付け。国際標準優先が 最大のメリット。アメリカもフォーラム標準→国際標準へ。
 日本はまだ国際標準をとっていく意識が低い。負けてからでは遅い。
 2006,2007?年度中に国際標準の戦略を決定。期限付は初めて。
 横の連携が取れてない会社が多い。本社・事業部・研究所が連携して標準化活動が必要。三位一体が必要。社内の連携も必要。経営者の認識も必要。
 標準の問題。積極的に国際標準をとりに良くことと、標準化の仕組みが問題。
 日本の立場、国際標準は日本の競争力を高めるために必要。他国がつくった標準では勝てない。
 標準は連鎖していく。次の標準は前の標準がベース。標準の連鎖によりライセンス量が高額化する。標準化団体に加盟して特許をとることが必要。

 中国はWTO/TBTを非難。国際標準に従うとライセンス料高額。またライセンス料を払っていても、他のメーカから侵害で訴えられるのはおかしい。

 標準化の仕組みが必要。上手く仕組みを作らないと標準化が維持できない。
 日本の企業同士が大きな流れの中で協調する必要がある。
 標準化での経験。デジカメが将来ものになりそう。当時キャノン、富士で2つあった。ユーザのため1つにした。世界的に普及。現在に至る。
 携帯電話の3Gは3つか4つの標準がある。中国も独自の標準へ。ユーザにとっては良くない。コスト高になる。
 キャノンは光カードの標準化でリードした。光カードはデータが消えない点で有利。しかし他社を取り込めず失敗した。ICカードが標準へ。
 2つの標準化は良くない。
 会社のコア技術の標準化は参加すべき。
 パソコンのOSにプリンタの各プリントメーカのドライバが入っている。各社のドライバが入らなければ画質が落ちる。標準ドライバでも良いとすると技術力のないメーカが勝ってしまい恐ろしい。
 標準がなければ自社の技術が活用できない場合がある。
 利益型の企業に向かって、国際標準を取得する必要あり。



追伸:<気になったニュース>
●『平成18(ワ)6108 特許権侵害差止請求事件 ヒューネット・ディスプレイテクノロジー(HDT)vs ウイルコム』
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061207130403.pdf
 ・・・先日取り上げたヒューネット・ディスプレイテクノロジー(HDT) vs ウイルコムの差止請求事件です。判決文が90頁もあり、後日注目すべき判断があればコメントします
●『国際標準への取り組み強化=総合戦略を正式決定−政府』
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061206-00000148-jij-pol
●『日本の技術を国際標準に 政府の知財本部が総合戦略 』
http://www.excite.co.jp/News/economy/20061206211322/Kyodo_20061206a237010s20061206211322.html
●『日中韓の特許情報 相互利用へ工程表(日刊工業新聞)』
http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=509
●『第6回日中韓特許庁長官会合の結果概要』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kokusai/kokusai3/asia_jckmeeting_06.htm
●『第18回日韓特許庁長官会合の結果概要』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kokusai/kokusai3/asia-jkmeeting_18.htm
●『第13回日中特許庁長官会合の結果概要』
http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai3/13_asia_jpmeeting.htm
●『次世代DVD 中国は独自企画「EVD」で対抗 』
http://www.sankei.co.jp/keizai/it/061207/itt061207000.htm
●『特許承認基準の変更を巡り最高裁で論争──マイクロソフトら5社は申立書を提出 』
http://www.computerworld.jp/topics/ma/53490.html
●『進歩性に関するKSR 事件、連邦最高裁で口頭審理 〜米各メディアは保護に値しない特許を生む現行基準に最高裁も批判的と報道〜』
http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/ip/news/pdf/061130.pdf
 ・・・KSR事件で何が問題になっているか分り易いです。