●平成18(行ケ)10151審決取消請求事件「aimer feel エメフィール」

Nbenrishi2006-12-03

 『平成18(行ケ)10151 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「aimer feel エメフィール」平成18年11月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061130151640.pdf)について取り上げます。


 本件は、「aimer feel エメフィール」の商標登録について商標法4条1項10号の商標登録無効審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その訴えは棄却された事案です。


 つまり、知財高裁は、取消事由1(本件商標と引用商標との類否の判断の誤り)について、

『(1) 本件商標について

 ア 本件商標は,「aimer feel エメフィール」の文字を標準文字で横書きしたものであって,その構成自体に照らして,「エメフィール」の文字部分が「aimer feel」の文字部分の片仮名表記であり,「aimer」が「エメ」に,「feel」が「フィール」に対応するものであるということができる。そして,我が国の一般国民の通常の外国語の理解力に照らすと,本件商標を構成する「aimer」,「エメ」は,「エメ」の表記から,フランス語で「愛する」を意味する語であると理解され,また,「feel」,「フィール」は,英語で「感じる」,「感じ」を意味する語であると理解されると考えられる。


 イ 本件商標は,上記のように,フランス語の単語と英語の単語とを組み合わせた造語とその片仮名表記であって,一体不可分の特定の概念を示すものとはいい難いところ,簡易迅速性を重んずる取引の実情にかんがみると,その一部分だけによって簡略に呼称,観念されることがあり得るといわなければならない。


 そこで,検討するのに,・・・並びに弁論の全趣旨によれば,被告は,昭和25年に昭和7年創業の呉服店を前身に有限会社として設立され,昭和43年に株式会社に組織変更された会社であるところ,昭和54年にフォーマルドレス部門として「エメ」ブランドを創設して,これを付した被告商品の販売を開始し,平成10年4月には,被告商品を扱う「エメ」の名称のフォーマルドレス専門店が全国で32店舗に達したこと,被告は,本件商標の商標登録出願のあった平成12年7月以前に限っても,被告商標を付した新作ドレスの展示即売会のチラシやその招待状,セールの案内状及び商品のカタログやパンフレット等を顧客に配布したり,「別冊25ansウエディング」その他多数のブライダル関連の雑誌に被告商標を付した記事や広告を掲載したりしていることが認められ,上記事実によれば,被告商標は,我が国において,本件商標の登録出願がされた平成12年7月12日には,被告商品を表示するものとして,取引者及び需要者の間に広く認識されるに至り,その状態が現在においても継続していると認められる。


 本件商標は,被告商標のうちの「AIMER」を標準の小文字で横書きした「aimer」や被告商標のうちの「エメ」と同一の「エメ」をその構成の一部に含む結合商標であるところ,上記のとおり,被告商標が,被告商品を表示するものとして我が国における取引者及び需要者の間に広く認識されていることにかんがみると,本件商標は,その外観,称呼及び観念上,被告商標を小文字にした部分(「aimer」)や被告商標と同一の部分(「エメ」)がその余の部分から分離して認識され得るものであると考えられる。


 そして,本件商標の指定商品は洋服,コートを除く被服であって,被告商品(フォーマルドレス,ブライダルドレス,ウェディングドレス,パーティードレス,ステージドレス等)と同一であるとはいえないものの,いずれもファッションに関連する衣服であるから,取引者及び需要者を共通にすることが多いと考えられる。そうであれば,本件商標がその指定商品に使用されたときは,その構成中の「aimer」,「エメ」の部分がこれに接する取引者及び需要者の注意を特に強く引くであろうことは容易に予想することができるのであって,本件商標からは,構成全体により「エメフィール」という称呼を生じるとともに,「aimer」,「エメ」の文字部分により,単に「エメ」という称呼も生じ,また,「愛する」という観念を生じるということができる。


 ウ 原告は,本件商標は,親しまれた「feel」を手掛かりにして,全体が特定の意味を持たない1つの商標と解すべきである,本件商標の使用態様にかんがみると,本件商標は,「aimer feel」や「エメフィール」のそれぞれ一体に使用され,一息に称呼されているから,常に一体のものとして把握,認識すべきである,被告による被告商標の使用には違法性があるから,これを保護すべき正当な周知性を生じさせることはない,本件商標の後半部分から「エメ」の称呼が生じることはないし,また,需要者がフランス語の「aimer」についての語学力を持っていることは期待できないから,「愛する」という観念は生じ得ない,などと主張する。


 しかしながら,上記イのとおり,簡易迅速性を重んずる取引の実情にかんがみると,商標の一部分だけによって簡略に呼称,観念されることがあり得るのであって,本件商標についても,被告商標の周知著名性の程度が高いことに照らすと,単に「エメ」という称呼が生じ,また,我が国の一般国民の通常の外国語の理解力に照らすと,「愛する」という観念を生じるということができるのである。


 そして,原告が主張するような態様で本件商標を使用しているとしても,本件商標が「aimer feel エメフィール」の文字を標準文字で横書きしたものである以上,「エメ」という称呼が生じ,また,「愛する」という観念を生ずるということに変わりはない。なお,被告による被告商標の使用に違法性がないことは,後記のとおりである。


 また,原告は,被告商標は,活字体の「AIMER」ではなく,「A」は両側が平行線で上部が半円で繋がり,「A」「E」「R」の文字は横線の左端が縦線を超えて左方へ突出した図案化された文字であるのに,審決は,単に活字体の「AIMER」をもって被告商標であると認定したと主張する。しかし,審決は,被告商標(請求人商標)のうちの「AIMER」は,引用商標をデザイン化したものであるとしているのであって,被告商標における「AIMER」が原告の主張するような図案化された文字であることを当然に前提としているものである。

  ・・・

(2) 引用商標について

 引用商標は,「AIMER」の文字を横書きしてなるものであり,我が国の一般国民の通常の外国語の理解力に照らすと,「エメ」の称呼及び「愛する」の観念が生じると認められる。


(3) 本件商標と引用商標との類否について

 そうすると,本件商標と引用商標は,「エメ」の称呼及び「愛する」の観念を共通にするから,本件商標は,引用商標に類似するものである。


(4) 原告は,引用商標の指定商品と同じ指定商品を含み,「AIMER+○○○」の構成からなる商標が被告以外の第三者に登録されているから,「AIMER」単独の引用商標に類似せず,商品出所の混同を考慮する必要はないと主張する。しかしながら,商標登録出願に係る商標が商標法4条1項11号に該当するか否かは,査定時における指定商品又は指定役務の取引の実情等を考慮して,個別具体的に判断すべきものであるから,「AIMER+○○○」の構成からなる商標が登録されているからといって,このことから,「AIMER+○○○」の構成から
なる商標がすべて引用商標に類似しないということはできない。本件商標は,上記のとおり,引用商標に類似するのであって,このことは,「AIMER+○○○」の構成からなる商標が登録されていることによっては左右されるものではない。


 また,原告は,引用商標の指定商品を離れると,「AIMER」単独の商標が被告以外の第三者に登録されているのであって,被告商標が周知のものであれば,このように多数の同じ綴りの商標が商標登録されることはなかったであろうから,結局,被告商標の周知性はブライダルドレスの商品分野に限って考慮すべきであり,しかも,本件商標は,指定商品から洋服,コートを放棄したから,被告商標との出所の混同を考慮する必要はなくなったと主張する。


 しかしながら,商標登録出願に係る商標が商標法4条1項10号に該当するか否かは,商標登録出願時及び査定時における商品又は役務の取引の実情等を考慮して,個別具体的に判断すべきものであるから,「AIMER」単独の商標が登録されているからといって,このことから,被告商標の周知性が認められる分野を確定することができるわけではない。


 そして,上記のとおり,被告商標は,被告商品を表示するものとして我が国における取引者及び需要者の間に広く認識されているのであって,本件商標の指定商品が洋服,コートを除く衣服であるとしても,ファッションに関連するから,本件商標がその指定商品に使用されたときは,その構成中の「aimer」,「エメ」の部分がこれに接する取引者及び需要者の注意を特に強く引くであろうと容易に予想することができる。そうすると,指定商品から洋服,コートを放棄したからといって,被告商標との出所の混同を考慮する必要がなくなったということはできない。
 

(5) したがって,「本件商標と引用商標は,「エメ」の称呼及び「愛する」の観念を共通にする場合がある類似する商標といわざるを得ない。」とした審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由1は,理由がない。


2 取消事由2(権利の濫用)について

(1) 上記1(1)イのとおり,被告は,昭和54年にフォーマルドレス部門として「エメ」ブランドを創設して,これを付した被告商品の販売を開始したものであるところ,甲224,乙1ないし6,9ないし11によれば,被告は,カネボウとの間で,昭和54年8月14日から各3年間ごとに被告商標の使用許諾に関する契約を継続した上,平成17年1月11日には引用商標に係る商標権の移転を受けていることが認められる。そして,被告が原告の営業を妨害する目的で本件商標について無効審判の請求をしたことをうかがわせるような事情はない。


(2) そうであれば,被告による無効審判の請求は,権利の濫用に当たるということはできないから,これを却下することなく判断した審決に何の誤りもない。


 したがって,原告主張の取消事由2も,理由がない。


第5 結論


 以上のとおりであって,原告主張の審決取消事由は,いずれも理由がないから,原告の請求は棄却されるべきである。』

と判示されました。


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