●『特許制度改革に一石を投じるKSR事件の米連邦最高裁判決(下)』

  日経BP社の知財Awarenessの『特許の「進歩性」審査基準を巡り 先進企業や法律家が意見表明 特許制度改革に一石を投じるKSR事件の米連邦最高裁判決(下)』(http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/nara_yoshida20061102.html)の記事によれば、複数引例を組み合わせて進歩性(米国では、非自明性)を否定する際、その組み合わせを審査官が立証する必要があるのか否かについて、KSR事件として、米国連邦最高裁判所において判断されているようです。


 この記事によれば、

 「審議開始当初は「動機(motivation)などの記載がなくても技術常識に基づいて進歩性を否定できる」とした第1審の“Flexible Standard(柔軟な基準)”を支持する意見書数が,「進歩性を否定するには組み合わせの動機や示唆についての証拠が必要」とした第2審(連邦巡回控訴裁判所:CAFC)の“Rigid Standard(厳格な基準)”を支持する意見書数を上回っていた。


 そして,本稿を執筆した2006年10月31日の時点において“Flexible Standard”を支持する意見が依然として優勢であるといえる。


 しかしながら,最近になってCAFCの判断を支持する意見が多数寄せられており,裁判の様相は複雑化してきている。


 “Flexible Standard” の支持意見は,本連載【上】(http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/gov/nara_yoshida20061027.html)で述べた通り,「組み合わせの示唆は必ずしも引用文献に開示/示唆されていなくてもよい」とするKSR側の見解(地裁判決)を趣旨としている。

・・・

 “Rigid Standard”の支持意見は,「組合せの動機や示唆について引用文献中に記載/証拠(Proof)が必要」とした見解(CAFC判決)を趣旨としている。


 このほかには,上記の両方の見解を支持しないものの,「“Rigid Standard” は過度に厳格であり,見直すべきである」といった「中立的な」意見が存在する。」

とのことです。



 米国では、パテントロールによる権利行使が大きな問題になっているので、日本とは逆に、“Rigid Standard”の立場から“Flexible Standard”、つまりプロパテントからアンチパテントの傾向が強まっているようです。


 一方、日本では、進歩性における複数引例の組み合わせに関し、これまでずっと「動機(motivation)などの記載がなくても技術常識に基づいて進歩性を否定できる」とした第1審の“Flexible Standard(柔軟な基準)”的な立場をとっていたものと思いますが、今年の6月末に出された『平成17(行ケ)10490 審決取消請求事件 H18.6.29 「紙葉類識別装置の光学検出部」(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060629173057.pdf)』等の判決を見ると、「進歩性を否定するには組み合わせの動機や示唆についての証拠が必要」とした第2審(連邦巡回控訴裁判所:CAFC)の“Rigid Standard(厳格な基準)”的な傾向が強まってきたのかなと思います。


 米連邦最高裁判所が、複数の引例の組み合わせの動機付けに関し、どのような判断をするか、本当に楽しみです。


 ともかく、日米ともに、同じ判断基準に落ち着いてくれれば、と思います。



追伸;

 本日、特許庁より本年度の弁理士試験の最終合格者が発表されました(http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/h18_benrisi_goukaku.htm)。

 合格者の皆様、おめでとうございます♪


 現在は、合格者の番号しか掲載されず、名前が公表されないので、昔の受験仲間の合格状況がわからないのが少々残念です。