●平成17(行ケ)10349 審決取消請求事件 商標権「赤毛のアン」

 今日は、とても天気が良かったですね。


 さて、今日は、『平成17(行ケ)10349 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成18年09月20日 知的財産高等裁判所 』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060922165841.pdf)について取り上げます。


 本件は、赤毛のアンの「Anne of Green Gables」の登録商標に対し、カナダのプリンス・エドワード・アイランド州が無効審判請求をし、特許庁がその商標登録は,我が国と被告を含むカナダ国政府との間の国際信義に反してなされたものであり,商標法4条1項7号の規定に違反して無効であるとの審決をしたため,原告が同審決の取消しを求めた事案で、結局、原告の請求を棄却しました。



 つまり、知財高裁は、「カ 小括」で、

『以上のとおり,(1)本件商標は,世界的に著名で高い文化的価値を有する作品の原題からなるものであり,我が国における商標出願の指定商品に照らすと,本件著作物,原作者又は主人公の価値,名声,評判を損うおそれがないとはいえないこと,(2)本件著作物は,カナダ国の誇る重要な文化的な遺産であり,我が国においても世代を超えて広く親しまれ,我が国とカナダ国の友好関係に重要な役割を担ってきた作品であること,(3)したがって,我が国が本件著作物,原作者又は主人公の価値,名声,評判を損なうおそれがあるような商標の登録を認めることは,我が国とカナダ国の国際信義に反し,両国の公益を損なうおそれが高いこと,(4)本件著作物の原題である「ANNE OF GREEN GABLES」との文字からなる標章は,カナダ国において,公的標章として保護され,私的機関がこれを使用することが禁じられており,この点は十分に斟酌されるべきであること,(5)本件著作物は大きな顧客吸引力を持つものであり,本件著作物の題号からなる商標の登録を原告のように本件著作物と何ら関係のない一民間企業に認め,その使用を独占させることは相当ではないこと,(6)原告ないしその関連会社と本件遺産相続人との間の書簡による合意内容などに照らすと,原告による本件商標の出願の経緯には社会的相当性を欠く面があったことは否定できないことなどを総合考慮すると,本件商標は,商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当し,商標登録を受けることができないものであるというべきである。』

と判示しました。


 本事件では、原告は,本件著作物とその続編の映画化とテレビ番組化に係る著作権に関し,モンゴメリの権利継承者からライセンスを受けていたランセンシーで,例外的かつ極めて限定的ではあるものの,商標使用を含む商品化権に関するライセンスを受けていたものの、原告と本件遺産相続人は,書簡による合意により,商標権等につき「書面により特段の合意をしない限り,上記B等のみがこれらの権利に関する全ての登録をなしうる権限を有します。」との確認をしており,原告は,本件原作者の遺産相続人から事前の許可を受けないで商標出願すれば合意違反になることは十分に認識していたにもかかわらず,原告は,正当権限者の許諾なく出願したという事情があったようです。


 詳細は、上記判決文を参照して下さい。