●『平成17(ワ)8362 不正競争行為差止等請求事件 東京地裁』

 今日は、『平成17(ワ)8362 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成18年07月31日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060731144128.pdf)について紹介します。


 本件では、原告が発明し出願して出願公開された発明の内容が不正競争防止法2条6項にいう営業秘密でないと判断され、原告の請求が棄却された事件です。


 つまり、本件営業秘密が不正競争防止法2条6項にいう営業秘密に当たるか(争点1)について、原告は、

『本件営業秘密の内容である認証技術が,原告自らが出願し(特願2002−184750号公開された特許出願(特開2003−101534号)に係る公開特許公報(乙9。以下本件公知例という。)にすべて開示されており,公知であるとの被告の主張は,争わない。)』

等と主張し、被告は、この点について、

『本件営業秘密の内容となる認証技術は,本件公知例(乙9)にすべて開示されており,公知である。
 また,このように公知の技術を秘密として管理することも不可能なので秘密管理性もない。
 したがって,本件営業秘密は不正競争防止法2条6項にいう営業秘密に該当しない。』

等と反論しました。


 そして、東京地裁は、争点1(本件営業秘密が不正競争防止法2条6項にいう営業秘密に当たるか)について、

『(1) 本件訴訟は,平成17年4月26日に提起され,同年6月20日に第1回口頭弁論期日が開かれた後,弁論準備手続に付され,主に原告が主張する営業秘密の特定をめぐって双方の主張が行われた。そして,原告は,平成18年6月14日の第8回弁論準備手続期日において,被告の不正競争行為の対象となる営業秘密について,本件営業秘密のとおり特定した。

 上記期日において,被告から,本件営業秘密の内容である認証技術は,本件公知例にすべて開示され,公知である旨主張されたのに対し,原告は,これを争わないと陳述した。

(2) 不正競争防止法における「営業秘密」は「秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって公然と知られていないものをいう」とされており(同法2条6項)「公然と知られていない」ものであることが要件とされる。

 しかし,本件営業秘密の内容である認証技術が,原告自らが出願した本件公知例にすべて開示されている公知のものであるとの被告の主張に対し,原告は,上記のとおり,これを争わないとし,そのほか,本件営業秘密が「公然と知られていない」ものであることについて何ら主張,立証を行わない。

 そうすると,本件営業秘密は公然と知られていないものであるとは認められず,不正競争防止法2条6項にいう営業秘密には当たらないというべきである。

(3) よって,その余の点について検討するまでもなく,原告の主張はいずれも理由がない。』(以上、本判決文より抜粋。)
と判示しました。


 特許出願の明細書および図面に記載された発明は、出願公開されて公知になると、不正競争防止法2条6項にいう営業秘密でなくなる、ということです。


 なお、本件の場合、被告の実施品が原告の特許発明の技術的範囲に属するように権利化できれば、特許法第65条のいわゆる補償金請求権(警告が条件ですが)や、特許権の請求対象になるので、こちらで頑張った方が良さそうですね。