●『進歩性の判断における商業的成功』について

  昨日、進歩性の判断において商業的成功が参酌されずに進歩性なしと判断された判決を紹介しました。


 判例検索システムに於いて、キーワードとして『商業的成功』と入れて検索すると、28件も出てきました。

 平成16年以降に出された判決10件ほど結果だけ見ましたが、全て原告の請求が棄却されていました。

 例えば、『平成17(行ケ)10625 審決取消 特許権 行政訴訟平成18年03月22日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060327161413.pdf)では、

『(2) また,原告は,本件発明実施品の商業的成功を主張するが,商業的成功は,製品価格,意匠,宣伝効果など,発明の構成以外の要素によっても左右されるものであるところ,原告の主張する商業的成功が,本件発明の構成のみによってもたらされていると認めるに足る証拠はない。』

と判示して棄却されていました。


 また、『平成17(行ケ)10069 特許権 行政訴訟 平成17年10月11日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/1A858F024C0D940F49257099001A30C2.pdf)では、

 『(3) なお,原告及び参加人は,本願発明は商業上の成功をしており,進歩性の判断に当たって,本願発明の商業上の成功も十分に考慮されるべきであると主張する。しかし,商業的成功には,通常様々な要因が関与しており,商業的に成功したということのみで本件発明の進歩性を肯定することはできない。』

と判示され棄却されていました。


 さらに、『平成15(行ケ)175  特許権 行政訴訟 平成16年05月31日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/6F9E3160B619986949256F17003B0B00.pdf)では、

『原告主張のように,本件出願の公開後に多くの特許出願がされているとしても,そのことをもって本件発明がパイオニア発明であるとはいうこともできないし,商業的成功は,社会のニーズ,宣伝活動等によって大きく影響されるものである。原告主張のように,商業的成功のあったことをもってしても,本件発明により直接奏される効果であると認めることはできない。』

と判示され棄却されていました。


 これらの結果を見る限り、進歩性があることを立証する際、『商業的成功』を主張することは、あまり意味がないようですね。