●『平成18(ネ)10005 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事

 今日は、『平成18(ネ)10005 特許権侵害差止請求権不存在確認等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成18年06月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060629095118.pdf)について、コメントします。


 本事件は、一審原告の被控訴人が一審被告であった本件特許の専用実施権者等の控訴人に対し、特許権侵害差止請求権不存在確認と、不正競争防止法に基づく差止め・損害賠償・謝罪広告等を請求したところ、原判決が同請求の大部分を認容したことから、控訴人が敗訴部分の取消しを求めて控訴した事件です。


 知財高裁は、本件控訴を棄却しました。


 その際、争点(4)(不正競争行為の成否)について、知財高裁は、

『控訴人は,控訴人文書の文言が本件特許権の侵害の「おそれ」を指摘しているにとどまるから,不正競争防止法2条1項14号にいう「虚偽の事実」の告知には当たらないと主張する。

 控訴人は,被控訴人の取引先宛に,


「貴社は、・・・上記特許権を侵害するおそれがあります。
 つきましては,本書面到着後7日以内に,文書をもって,貴社商品が,上記特許権を侵害しないことを明らかにされるよう要求します。」


 旨の通知をしたことが認められるところ,原判決の説示のとおり,被控訴人製品は本件特許権を侵害するものではないのであるから,特許権を侵害する「おそれ」を指摘することも,不正競争防止法2条1項14号にいう「虚偽の事実」の告知に当たるといわざるを得ない。


そして,特許権侵害の「おそれ」を指摘する警告文書であっても,これを受領した者が,特許権を侵害したとされる当事者ではなく,その取引先の第三者であるときは,当該商品等の取引を控える場合が多いことは公知の事実であることからして,「おそれ」という文言が付加されているか否かによって,「虚偽の事実」に該当するか否かが左右されるものではない。


 よって,控訴人の上記主張は採用できない。』


と判断しました。


 また、争点(5)(控訴人の故意又は過失)について、

『控訴人は,A弁理士から,被控訴人製品が本件特許発明の技術的範囲に属する旨の「口頭鑑定書」を受領しており,専門家の見解に基づいて控訴人文書を送付したものであるから,過失はないと主張する。


 しかし,同鑑定書は,控訴人の故意又は過失の成否に関わる重要な証拠であるにもかかわらず,当審に至って初めて証拠として提出されたものであり,原審においてその提出を妨げる特段の状況があったともうかがわれないことに照らすと,控訴人文書の送付は同鑑定書に基づいてしたとする上記主張の信用性には疑問が残る。


 また,仮に同鑑定書の見解に従って控訴人文書を送付したのだとしても,例えば,同鑑定書のうち構成要件4-D等の「バイアス」が「バイアステープ」を意味することを前提とする見解については,妥当性を著しく欠くことは前記2(2)のとおりであり,控訴人において同鑑定書を精査すれば,同見解が誤りであることを十分に認識し得たものである。さらに,控訴人としては,同鑑定書の見解に沿って,被控訴人製品が本件特許権を侵害するという主張をするのであれば,少なくとも,控訴人文書を受領したビデオプロモーション社が控訴人の主張の当否を判断できるように,同鑑定書の見解の要旨を明らかにした上で行うべきであったものである。


 そうすると,控訴人文書の送付は同鑑定書に依拠したものであるから控訴人には過失がない,との控訴人の主張も,採用することはできない。』


と判断しました。


 侵害警告は、慎重に行いたいものです。
 

 詳細は、判決文を参照ください。


追伸;<今日、気になったニュース>
●『ケータイ画像で情報を検索――オリンパスが実証実験』
http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMITfa002029062006
・・・さきほどテレ東のWBSニュースでも放送していました。MPEG7までは使ってなさそうですが、面白そうです。今後に期待します。
●『通信・放送融合の見取り図(5)技術革新に対応できる制度設計へ』
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT06000029062006
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http://it.nikkei.co.jp/mobile/news/index.aspx?n=MMITfa000029062006
●『IEEE 1394、家電分野で復権の兆し』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/29/news024.html
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http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/29/news047.html