●『平成17(ワ)14346 侵害差止等請求事件 民事訴訟 東京地裁』

 『平成17(ワ)14346 侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟 平成18年06月23日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060626111418.pdf)では、被告の(文理)侵害を認めて、原告が求めた侵害差止や廃棄請求を認容しました。

 
 この判決の中で、裁判所は、実用新案登録請求の範囲における「補助具本体1の下部に」の構成を、実用新案登録請求の範囲にこれ以上の限定がないことと、本願実用新案明細書の課題や、目的、作用効果を参酌して、被告の主張は本件考案1の技術的範囲をその実施例又はベストモードに限定しようとするものであり,到底採用することができないと判断し,被告各製品は,いずれも,本件考案1及び2の構成要件をすべて充足し,その技術的範囲に属する、と判断しました。


 また、裁判所は、『新規性又は進歩性欠如』について、
『(1) 新規性について
 公知技術1ないし18は,いずれも本件考案又は本件発明の構成要件のすべてを具備したものではない。したがって,本件考案及び本件発明が新規性を欠くとはいえない。

 (2) 進歩性について
 本件考案及び本件発明は,建築物などの基礎台,基礎柱等の基礎工事において,鉄製型枠内に打ち込んだコンクリート等の天端ならし,すなわち基礎の所定の高さを得るとともに表面を水平にならす際に,打ち込んだコンクリートの上に天端ならし材の流し込みをするレベルを示すための「天端出し補助具」に関するものであり(本件実用新案明細書【0002】 ,本件特許明細書【0002】),流動性のあるコンクリートに対して用いられるものであるところ,公知技術1ないし18は,コンクリート壁,地中等の硬質の取付面に打ち込まれる杭やアンカーに関するものであり(当事者間に争いのない事実),そもそも流動性のあるコンクリートに対して用いられる天端出し補助具に関するものはない。
 したがって,公知技術1ないし18中には,進歩性の判断において第1引用例となるべきものがないから,本件考案及び本件発明が進歩性を欠く旨の被告の主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。』
 と判示しました。


 本事件は、久々の侵害訴訟の認容判決であり、また、実用新案登録請求の範囲を実施例等に限定解釈せずに、本願実用新案明細書の課題や、目的、作用効果を参酌して文理侵害を認定した点と、進歩性等の無効理由がなしを認定した点とで、詳細に検討する価値がある事件かも知れません。


追伸;
●『平成18年度法改正説明会テキスト』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/ibento/text/h18_houkaisei.htm
●『特許法施行令及び特許法等関係手数料令の一部改正について』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/iken/iken_seireian.htm
●『「特許法施行令及び特許法等関係手数料令の一部を改正する政令案」について』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/iken/iken_seireian.htm
・・・改正政令案の施行日から一年以内に出願の取下げ又は放棄した場合に、納付した審査請求料の全額を返還する、とのことです。