●均等侵害の第1要件の特許発明の本質的部分について

  一昨日、昨日と紹介した判決の中で、均等侵害に触れたので、均等侵害について、前々から疑問というか、釈然としないことについて、コメントします。なお、このことは、他の方の論文でも指摘されていた個所のような気もします。

 
 つまり、均等侵害では、均等の5要件のうちの、第1要件の、

『1.上記部分(相違点)が特許発明の本質的部分ではないこと。』

 を満たさず、非侵害と判断された事件が多数あります。


 昨日紹介した判決でも、

『上記均等の第1要件における特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,特許発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核的,特徴的部分をいうものと解される。』

と判断して、明細書中に記載された発明の目的や効果だけでなく、手続補正書および意見書における引用文献に対する補正および主張の出願経過を参酌して、本発明の本質的部分を認定して、非侵害と判断されています。


 この判断自体は、勿論正しいと思います。


 しかし、前々から少し疑問ないしは不可解に思っていた点は、仮に、特許発明の構成がA+B+C+Dとします。そして、単純ですが公知の構成要素を非本質的部分とみなします。


 すると、仮に構成Dのみが公知の場合、A、B、C(A+B+C)は本質的部分で、Dのみが非本質的部分になります。


 これに対し、構成B、C、D(B+C+D)が公知の場合、Aが本質的部分で、B、C、Dが非本質的部分になります。


 そう考えると、同じ構成要素の発明だとしても、公知部分の構成要素が多いほど、すなわち公知技術に知い改良発明ほど、非本質的部分の範囲が広くなり、均等の認める範囲が広くなり、その反対に、公知部分の少ない基本発明ほど、非本質的部分の範囲が狭くなり、均等の範囲が狭くなる?、ということになり、正しいようですが、何か釈然としません。


 つまり、上記例において、仮に全ての構成要素が新規の基本発明、すなわちA、B、C、D(A+B+C+D)全てが本発明の本質的部分であるとすると、非本質的部分がなくなり、均等論自体が認められるなくなります。


 基本発明ほど、均等の範囲を広くすべき、と考えられないでしょうか?。
 

 勿論、公知部分だから非本質的部分、新規部分だから本質的部分と単純にみなせないことは承知しています。



 ともかく、我々、弁理士や特許実務者は、均等侵害を最初から期待するようでは、いけません。


 良く言われますが、均等侵害は、1ラウンド(文理侵害)負けの2ラウンド目の戦いですので、1ラウンド(文理侵害)目で勝てるように明細書を作成すべきだからです。


追伸;<今日、参考になったニュース>
●『地域団体商標の出願リストを公開(日本商標協会)』
http://www.jp-ta.jp/member/001/06rist.html