●『東京地裁知財部から見た特許審査・審判』について(2)

Nbenrishi2006-06-11

 昨日に続いて『東京地裁知財部から見た特許審査・審判』(http://www.tokugikon.jp/gikonshi/239tokusyu2.pdf)の記事から、特許実務上、役に立ちそうな部分を抜粋させて頂きます。


 まず、『侵害訴訟における特許無効判断の問題点』の欄で、

『以上のとおりキルビー判決で特許無効の判断が可能とされ、更に特許法104条の3により明白性要件なしに特許無効の判断が可能となったが、無効審判請求制度との比較において、侵害訴訟における特許無効判断の問題点も浮かび上がってくる。

 第1に、当事者の主張は、多くの引用例を持ち出し、様々な組合せで主張してくるが、一致点・相違点の認定、相違点についての判断ときれいに整理されていない。引用例の数が多い分、どれが大事な引用例かが埋もれてしまっている。逆に、第2引用例を引用すべき部分が周知技術等で簡単に片づけられている。

・・・

 第3に、地裁の裁判官は特許無効の判断に慣れているかが問題となる。進歩性の判断は、まず出来上がったものを見て簡単だと感じ、実はそれは後知恵であったことを気づかされ、後知恵に陥らないように自戒してもやはりこの程度のことはかえって当然過ぎて引用例が見つからないのではないかと考えたりする。そのような行ったり来たりを繰り返して進歩性判断の感覚を磨いていく。地裁の裁判官が限界線上にある進歩性判断においても信頼を得るためには、事件の質及び量の面で、相当の経験を積む必要がある。』


 本当にその通りだと思います。裁判官だけでなく、審査官・審判官、弁理士等の特許実務者にも、当てはまる事項だと思います。


  なお、この論文中に『(4)進歩性の判断について』の欄で、
『進歩性の判断の難しさは、外科医にとっての盲腸手術のように、永遠の課題である。判断の基本は、具体的に引用例を積み重ねていくことであると考えられ、安易に周知慣用技術等に頼るべきではないが、素人の目で見ると、この程度のものがどうして特許になってしまうのかと感じられる特許が目に付く。判決の場合でも、細かく議論を積み重ねていくことと、そのようにして出した結論を数日置いてから全体のバランスを失していないかと見直すことの両面からの検討が必要である。』

と述べられています。


 これも、本当にその通りだと思います。


 進歩性の判断については、主観や独自の見解でなく、ぜひとも、裁判官、審査官・審判官、出願人等の間で、三者納得の共通のルールを明らかにし、全体のバランスが図られることを願います。

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