●『東京地裁知財部から見た特許審査・審判』について

 今日(6/10)は、とてもいい天気ですね♪。サイクリング日和です!


 さて、今日は、『東京高裁から見た特許審査・審判』に続き、『東京地裁知財部から見た特許審査・審判』(http://www.tokugikon.jp/gikonshi/239tokusyu2.pdf)の記事から、我々、特許実務者にとり、参考になる個所を抜粋させて頂きます。なお、詳細は、上記記事を参照して下さい。この記事も、昨年年末に同時に掲載された記事ですので、やはり、昨年4月1日に施行された104条の3関連が多いようです。

 
 まず、『2.特許法104条の3の新設等』に関し、
『(1)キルビー判決後の侵害訴訟
 キルビー最高裁判決は、地裁の仕事に大きな変化をもたらした。
 第1に、特許無効の主張が大幅に増えた。従来は、侵害事件では特許無効の判断ができないと考えられていたため無効の主張は控えられていたが、現在では、特許事件で無効の主張が提出されない事件は極めて少ないとの感じを持っている。

 第2に、中止(特許法168条2項)の件数が減少した。

 第3に、付随的効果として、無理なクレーム解釈が減った。従来は、技術的範囲の解釈の中で実質的に特許を全部又は一部無効とする判断がされる傾向があったが、現在では、本来特許無効の判断の中で行うべき判断は無効の判断の中で行い、実質と形式のずれが少なくなってきている。
 これらの結果、地裁の仕事における特許無効の判断の比率が高まり、地裁の仕事が知財高裁の仕事に近づいてきた印象がある。』

とのことです。


 次に、
『この説明の中で重要な点は、特許法104条の3の立法後も、審決取消訴訟を含めた無効審判手続ルートが特許無効を判断する本来のルートであるとの基本的枠組が維持されていることである。前記のとおり、特許法104条の3等の新設が司法制度改革ルートで行われ、その立法趣旨についての理解が十分行き渡っていないおそれがあるため、この点は強調しておきたい。

 その結果、特許法167条(審決の効力−同一事実同一証拠)の適用上、侵害訴訟の被告が無効審判を申し立て、同時に侵害訴訟でも無効の抗弁を主張したが、先に不成立審決が確定した場合はもちろん、他人が申し立てた無効審判請求において不成立審決が確定後、侵害訴訟で同一事実同一証拠により無効を主張することが許されないことは、当然のことと考えられる)。』

と述べられています。


  特許法167条の一事不再理の規定により、無効審決確定の効力が訴訟における無効主張にも及ぶようですので、無効審判を請求する場合は、注意が必要です。


 次に、『3.審査官・審判官に対し望むこと』の欄で、
『(1)意識の持ち方
・・・
 この点は、審査・審判の世界でも同じではないかと思われる。このクレームが侵害訴訟に至った場合にどのように扱われるかとの観点から常に考える意識を持ち、そのような観点からクレームの記載等を見直していただきたい。その点の意識が足りないのではないかと思われるクレームに出会うことがある。例えば、製造方法的な記載のあるクレームは、侵害訴訟でどのように取り扱われるかに思いが至れば、そのような記載が特定のために是非とも必要なものかもっと検討するはずである。また、機能的クレームについても、これだけ少ない実施例でこれだけ広いクレームでよいのかとの疑問が当然生ずるはずである。』

と述べられています。


 我々、弁理士などの特許実務者にとっても、とても参考になるアドバイスです。


 また、
『(2)出願経過について
 欧州では最近、クレーム解釈に当たり出願経過を考慮しないとの判断が続いているが、日本では、アメリにおけると同様、出願経過を考慮するのが実務である。対立が激しい事件で拒絶理由通知やそれに対する意見書を読んでいると、拒絶理由通知に対して意見書が十分答えていないにもかかわらず特許査定されているのではないかと思われる事例がある。この問題点は、現在ではかなり改善が進んでいるようだが、なお一層の改善をお願いしたい。

(3)特許法36条4項について
 化学の広い範囲のクレームなのに、それを裏付ける実施例がわずかしか記載されていないなど、特許法36条違反ではないかと強く争われる事件が依然として存在している。』


 これも、我々、特許実務者にとり、とても参考になるアドバイスです。

追伸;<今日、気になったニュース>
●『IPマルチキャストで地デジ再送信、著作権処理を簡素化へ』
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0606/09/news096.html
●『地上デジタル送受信技術、特許を共同管理・松下やソニーが新会社』
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=AS3Y09004%2009062006
・・・使用許諾の窓口を一本化させ、特許使用料を従来の5分の1程度に引き下げ、地デジ製品の普及を図ることのようです。とても良いことだと思います。

●『大学の特許収入が初めて6億円を超える』
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/index.cfm?i=2006061002491b3