●『知財高裁から見た特許審査・審判』について(2)

 今日も、昨日に続いてもう少し『知財高裁から見た特許審査・審判』(http://www.tokugikon.jp/gikonshi/gikonshi-backnumber-frame.html)の記事から、我々、特許実務者にとって、役に立ちそうな部分を抜粋させて頂きます。


 しかし、昨日上記の論文の中からこの日記で紹介した、

「キルビー判決以降平成16年までの特許侵害訴訟401件中、権利濫用の抗弁が主張されたものは229件(57%)、そのうち無効審判が同時係属したものは146件(64%)、平成16年に限ってみれば、特許侵害訴訟70件中、権利濫用の抗弁が主張されたものは56件(80%)」

の権利濫用の抗弁の80%の高さは、改めて考えてみると、ビックリしますね!

 さて、今日は、上記論文の中で、『4.特許審査・審判への提言 (3)審査について 』として、審査官の方向けに言われた提言を、上記論文より抜粋させて頂きます。


 つまり、『(3)審査について』の欄で、

「(3)特許性のある発明
 適切な補正をすれば救われた可能性がある発明について、補正されなかったために拒絶査定されたケースが散見される。拒絶審決取消訴訟の段階では補正の余地がないから、審査官には、適正な補正をすることで進歩性等の要件を満たし、特許となり得る発明であると判断するときは、適切に拒絶理由を示して適正な補正を促し、あるいは補正の示唆を与えるなどして、審査段階及び前置審査段階で特許の取得ができるよう支援することを期待したい。

 特許査定については、権利成立後の特許発明の技術的範囲がどうなるかを十分に考慮した上で、特許法36条が定める記載要件の不備がないか、特に、明細書の開示に見合ったクレームとなっているかなどの点について慎重に検討することも必要である。


(4)拒絶査定の充実
 拒絶査定は、後の審判や審決取消訴訟でレビューの対象となり得る行政処分であることを念頭に置くべきである。特許法29条による拒絶査定を例にとると、本願発明を正しく理解すること、拒絶理由を構成する適切な引用例を使うことはもとより、周知慣用技術についても、きちんと引用例を示し、出願人に対して分かりやすく拒絶理由を示すことが必要である。不意打ち、後智恵(ハインドサイト)と批判されないためにも、出願人と適切にコミュニケーションを図ることが大切であろう。」

と提言されています。

 これらのコメントは、我々、弁理士知財部員等の特許実務者にとっても、とても参考になる提言ではないかと思います。


 追伸;<今日、参考になったニュース>
●『知的財産推進計画2006』
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/060609keikaku.pdf
●『知的財産戦略の進捗状況 知的財産推進計画2006 参考資料』
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/060609siryou.pdf
●『ソニー人工知能の研究所解散・本体で研究継続』
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=AS1D0905O%2009062006