●平成17(行ケ)10560 審決取消請求事件「自己発光素子の駆動装置及

 昨日、弁理士試験一次試験の発表がありましたね。一次試験に合格をされた受験生の皆様、二次試験まで1月をきっていますので、ここからが勝負です!!。気を抜かず頑張ってください!!
 
 さて、本日(6/7)は、査定系の知財判決が5件出ていました。まず、今日は、そのうちの一件である『平成17(行ケ)10560 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「自己発光素子の駆動装置及び方法」 平成18年06月06日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060606175725.pdf)が中間処理等の特許実務上、役立ちそうなので、コメントします。


 本事件は、『自己発光素子の駆動装置』という特許出願の拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、特許請求の範囲中の用語「自己発光素子」に、引例のLEDが含まれるか否かが争点の一つになりました。


 知財高裁は、本件でも、平成3年のリパーゼ最高裁の判決通り、請求の範囲中の用語を、その用語通り判断して、原告の請求を棄却しました。


 つまり、この判決文の中で、裁判所は、
「 ウ ここで,本願発明の特許請求の範囲の記載(前記第2の2)をみると,本願発明の自己発光素子について,その果たしている機能には,何ら限定がなく,かつ,本願発明において,自己発光素子が液晶のバックライトとして照明のために用いられる場合を含むと解しても,文言的にも技術的にも,矛盾,抵触するところは,全くないのであって,本件優先日当時における上記技術水準の下において,駆動部が,駆動電流/電圧を変化させてディスプレイ装置に備えられた表示そのものを行う自己発光素子の発光輝度を変化させることによって,ディスプレイ装置の発光輝度が調節されるもののみならず,駆動部が,駆動電流/電圧を変化させて,ディスプレイ装置においてバックライトとして照明のために用いられている自己発光素子の発光輝度を変化させることによって,ディスプレイ装置の発光輝度を変化させるものも本願発明の構成に含まれると自然に理解することができるものである。


 そうすると,本願発明の特許請求の範囲の記載に従えば,本願発明における「自己発光素子」は,自己発光素子そのもので表示を行う素子に限られず,ディスプレイ装置においてバックライトとして照明のために使用されている素子をも含むと解するのが相当である。


エ 原告は,本願発明の特許請求の範囲の記載においては,自己発光素子がディスプレイするためのものと具体的に限定していないが,本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すれば,本願発明の「自己発光素子」が,ディスプレイするための素子であることが明らかであると主張する。


 しかしながら発明の要旨は,願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて認定されなければならず,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない場合や,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどといった特段の事情が存在しない限り,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して発明の要旨を認定することは許されない。本件においては,上記のとおり,本願発明の特許請求の範囲の記載から,本願発明における自己発光素子は,表示そのものを行う素子である場合も,ディスプレイ装置において液晶のバックライトとして用いられる素子である場合も含むものして理解するのが相当であり,その技術的意義が不明確であるということができる場合ではなく,他に特段の事情も見いだせないから,原告の主張は,採用できない。

・・・

 また,特許法70条2項は,特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定めるられることを前提とした上で,特許請求の範囲に記載された個々の用語の意義の解釈について規定したものであって,この規定により,発明の詳細な説明中には記載されているが特許請求の範囲には記載されていない事項を特許請求の範囲に記載されているものと解釈することが容認されるものでないことはいまでもないから,同規定の趣旨を出願系にも類推適用すべき旨の原告の主張は,独自の見解というほかはなく,採用の限りではない。


オ したがって,本願発明の「自己発光素子」は,表示そのものを行う素子に限られ,バックライトとして使用される素子を含まないことを前提とする原告の主張は,採用することができず,引用発明の「LED7」を本願発明の「自己発光素子」に対応させた審決に誤りはない。」(以上、本判決文より抜粋。)

と判断しました。


 なお、本事件も、リパーゼ最高裁の事件と同様に、査定系の訴訟です。


追伸;<今日、参考になったニュース>
● 『日米特許庁における特許審査ハイウェイ試行プログラムの申出手続き』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/t_torikumi/highway_pilot_program.htm
●『意匠法等の一部を改正する法律(平成18年6月7日法律第55号) 』
http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kaisei/kaisei2/ishou_houkaisei.htm
・・・国会を通過し公布されたようです。
●『早稲田大学知的財産法制研究センター ニュースレター第9号』
http://www.21coe-win-cls.org/rclip/newsletter/200605.pdf
・・・このニュースレターによれば、韓国でも均等論を日本と同様の5要件で判断し(第1要件が若干日本とは異なるようです。)、またキルビー判決のように侵害訴訟において無効判断をした大法院判決があるとのことです。
●『【SID】LG.Philips LCD社,世界最大100型の液晶パネルを展示』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060607/117914/
●『SID】ブリヂストン,4096色表示の電子ペーパーを初めて披露』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060607/117915/
●『【SID】世界最大をうたう14.1型のフレキシブル電子ペーパー,LG.Philips LCD社が披露』
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060607/117917/