●『平成17(行ケ)10628 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟』 

Nbenrishi2006-06-05

  今日は、新たな知財判決が出ていませんでした。よって、先週末公表された『平成17(行ケ)10628 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成18年05月31日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060601133624.pdf)についてコメントします。


 本判決は、特許実務者にとり、勉強になる事例の一つかと思います。なお、出願日は平成5年2月25日で、補正の適否を新規事項ではなく、旧40条の要旨変更により判断していた時代の出願ですので、受験生の方は、無視したほうが良いかも?知れません。


 さて、本事件は、権利者が特許無効審決の取消しを求めた訴訟ですが、その訴えは棄却されました。


 概要を説明すると、出願当初の請求の範囲に「サイクロヂニン末と混合」する工程が記載されていましたが、補正により当該工程を削除して特許になりました。なお、明細書には、「サイクロヂニン末と混合」する工程を有する実施例のみ記載されていたようです。


 無効審判では、その補正が、当初明細書の要旨を変更するものであるから,平成5年法改正前の特許法40条により,出願日が本件補正のされた日に繰り下がり、本件発明が,本件補正のされた日より前に公開された自分の特許の公開公報に記載された発明により基づいて進歩性なしで無効になったようです。高裁でも、無効審決が維持されました。


 本事件は、要旨変更(旧40条)の時代ですので、個人的には、若干判断が厳しいような気もします。


 補正の適否を新規事項の追加か否かで判断する現在の審査基準でも、「第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正(http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_iii.pdf)の『新規事項の判断に関する事例1』に示すように、実施例に下位概念の例がなくても、請求の範囲中の構成要件を削除することにより、下位概念から上位概念にする補正が認められる場合も有るからです。


 なお、本事件では、権利者は、審査段階における「早期審査に関する事情説明書」や「上申書」において、「サイクロヂニン末と混合」する工程を本発明の構成要素としてしっかり主張していたようですので、これらの書類での主張も本発明の要旨に影響を与えていたようです。


追伸:土日サイクリングしているコースの途中の公園でハスの花が綺麗でした♪。アップします。