●『平成17(行ケ)10420 審決取消請求事件 特許権 知財高裁』

 今日は、『平成17(行ケ)10420 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟 平成18年05月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060530194928.pdf)の事件について、コメントします。


 この判決文は、45頁もあり、とても長いので、斜め読みしかしませんでしたが、国内優先権の利益を争っていたので、興味を持ちました。


 本判決では、「電話回線システム」としか開示されていない原出願に対し国内優先権により後から追加した「インターネット」の発明に、国内優先権の利益が認められるか否かが争いとなったようです。


 結局、本事件では、知財高裁も、国内優先権の効果を認めず、原告の請求を棄却しました。


 判決文には書いてありませんが、個人的には、知財高裁は、国内優先権の利益が認められる範囲を、補正が認められる範囲、すなわち新規事項の追加にならない範囲と判断しており、この意味で、『人口乳首事件』と同様の判断をしているものと思います。


 つまり、本事件の特許出願は、平成12年5月31日の出願です。平成5年改正法による平成6年1月1日以降の出願ですので、補正あれば、補正の適否を、要旨変更ではなく(旧40条)、新規事項の追加か否か(17条の2第3項)で判断することになります。


 よって、国内優先の利益が認められる範囲も、補正の適否の判断と同様に新規事項の追加か否かで判断し、基礎出願明細書に「インターネット」、もしくは「インターネット」を含むとするTCP/IP等の記載がない以上、「インターネット」を追加する補正は、新規事項の追加であり、国内優先権の効果も認められない、とするのは、遡及的利益を与える補正等の手続との間で、バランスの良い判断かと思います。


 なお、「人口乳首事件」の場合にも、基礎出願明細書には環状部の伸縮部のみが開示され、螺旋状の伸縮部が開示されてなかった以上、後から螺旋状の伸縮部を追加する補正は、新規事項の追加であり、適正な補正として認められない以上、国内優先権の効果も認められない、と個人的には考えています。


追伸;<今日、参考になったニュース>
特許権無効判断において審決取消訴訟と侵害訴訟が果たすべき役割
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/takabayashi20060601.html
●液晶特許、韓国Samsungの大量出願と意外な空白地帯
http://www.nikkeibp.co.jp/news/manu06q2/505126
●液晶分野で脅かされる日本企業の技術優位性
 猛追する韓国サムスン,日本企業がとるべき活路とは
http://sangyo.jp/ri/digital_map/article/20060601.html
●技術を開発し、チップで儲ける──Qualcommのビジネスモデル
http://cgi.itmedia.co.jp/g/02_0106062711_/enterprise/mobile/articles/0606/01/news014.html