●『平成17年(行ケ)第10645号審決取消請求事件』

 昨日紹介した『平成17年(行ケ)第10645号審決取消請求事件 平成18年5月10日』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060525093225.pdf)の事件ですが、本事件では、請求の範囲における『帯電』の用語の意義を、明細書の記載に基づいて判断し、電荷保存則に反するとして発明が不明確とする一審判決を支持し、原告の請求を棄却した事件です。


 詳細は、この判決書を参照して欲しいのですが、そのポイントを抜き取ると、以下のようです。


 つまり、裁判所は、「本願明細書の請求項1には「該密封包装物3の側面部3 に高圧電源6の出力端子からの単一の電極4を接触ないし近接せしめて高電圧のかかった該電極4による電界により該密封包装物3内の内容物1に電気絶縁性被膜2を介して帯電せしめ」と記載されており,請求項2ないし4においても同記載が引用されているのでこれにより構成される本願発明の明確性及び実施可能性につき,以下検討する。
 (1)一般に帯電とは物体が摩擦などによって電気を帯びることをいい甲4・130 頁2 〜 3 行参照。),例えばガラス棒を絹布でこすった場合にガラス棒が正電荷の,絹布が負電荷の電気を帯びることなどが挙げられる。もっとも,静電誘導作用によりプラスとマイナスの分極が生じることをもって「帯電」という場合もあり(甲4・134 頁24 欄参照)「帯電」という用語の意義は一義的ではない
 そこで,本願発明における「帯電」の意義を明らかにするため,本願明細書の発明の詳細な説明,及び,図面の簡単な説明の記載,並びに図面1をみると次のとおりである(甲5)。 
 ・・・

 したがって,本願発明のように「該密封包装物3の側面部3 に・・・単一の電極4を接触ないし近接せしめて・・・該密封包装物3内の内容物1に電気絶縁性被膜2を介して帯電せしめ」ることは,電荷保存則に反し,何人にも実現することが不可能であるから,このような発明は不明確であるといわざるを得ず,また,本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないものである。
 ・・・

 以上のとおり,原告主張の審決取消事由1(特許法36条4項及び6項についての判断の誤り)は理由がないのでその余の取消事由について判断するまでもなく原告の請求は棄却されるべきである。」
 と判断しました(以上、本判決書より引用)。


 平成3年の最高裁「リパーゼ」判決のクレーム解釈が用いられています。


追伸1;<今日、参考になったニュース>
●『知財ビジネスアカデミー「受講生の声(2005年度プレコースを終えて)」(2006年5月26日)』
http://www.jpaa.or.jp/ipba/ipba_sub5.html
・・・パテント誌にも掲載されていた受験生の記事が閲覧できます。
●『刊行物「研究年報 【2005】 平成17年度」を掲載いたしました。』(NHK放送技術研究所
http://www.nhk.or.jp/strl/publica/nenpou-h17/index.html
・・・通信・放送技術の勉強になります。
●『事業戦略,研究開発戦略,知財実務の融合が最大のミッション 企業価値を高める知的財産マネジメント(下)』
http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/etc/tomatsu20060526.html


追伸;<今日の知財判決>
●『平成17(行ケ)10817 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成18年05月25日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060526133530.pdf
●『 平成17(行ケ)10754 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成18年05月25日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060526133357.pdf
●『平成17(行ケ)10541 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成18年05月25日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060526133228.pdf 
●『平成17(行ケ)10432 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成18年05月25日 知的財産高等裁判所
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060526133027.pdf
・・・特許権3件の審決取消訴訟は棄却されたようです(1件目の商標の審決取消訴訟は認容されました。)。興味のある内容であれば、後日、紹介します。