●特許法第1条と「人口乳首事件」(3)

 4/28の日記で書いた「特許発明の技術的範囲は、その明細書または図面の開示範囲(特許法第1条が根拠)と、特許請求の範囲(特許法第70条が根拠)とのAND部分(共通部分)しか及ばない。」の意味が、例えば、以下のように勘違いされると困りますので(特に初学者の方や受験生の方)、具体例を交えて少し補足したいと思います。<上記AND部分の意味の勘違いの一例>
●具体例;特許発明1(フラッシュ無しのフィルム式カメラ)。特許発明2(フラッシュ付きフィルム式カメラ)。
●勘違い;特許発明1の明細書および図面には、特許発明2(フラッシュ付きフィルム式カメラ)が開示されてなく、また特許発明1の実施例(フラッシュ無しのフィルム式カメラ)から当業者が容易に思いつかない。
 よって、特許発明1の技術的範囲には、特許発明2に係る製品は属さない。

           ↑
         勘違いです。<上記AND部分の意味>
●具体例;特許発明1(フィルム式カメラ)。特許発明2(デジカメ)。
 ※フィルム式カメラとデジカメとは、写真を撮るための構成がほとんど違うものとします。
★特許発明1(フィルム式カメラ)
特許請求の範囲・・・「撮影部+転写部とを有するカメラ」
実施例・・・「機械式の撮影部と、機械式の転写部を有するカメラ」
★特許発明2(デジカメ)
特許請求の範囲・・・「撮影部+転写部とを有するカメラ」
実施例・・・「電子式の撮影部と、電子式の転写部を有するカメラ」


 この場合、特許発明1の技術的範囲は、あくまで明細書等に開示された「機械式の撮影部と、機械式の転写部を有するカメラ、およびそのカメラから当業者が容易に認識できるカメラ」まで。電子式のカメラには及ばない。特許発明1の明細書等には、電子式のカメラが開示されていないから。


 一方、特許発明2の技術的範囲は、あくまで明細書等に開示された「電子式の撮影部と、電子式の転写部を有するカメラ、およびそのカメラから当業者が容易に認識できるカメラ」まで。機械式のカメラには及ばない。特許発明2の明細書等には、機械式のカメラが開示されていないから。


             ↑
         こちらの意味です。


 追伸;<今日、参考になったニュース> 
●『半導体7社、設備投資1兆円・今年度』
http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=AT1D0109M%2003052006
●『ソニー、大型有機ELの開発本格化――今年度中に試作ライン』
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=AS1D0206C%2002052006