●特許発明の技術的範囲について

 特許発明の技術的範囲について、機能的クレームの解釈の判例の紹介と共に、普段の実務に基づいて色々思うところを書いてきましたが、本当は、自分が実際に裁判を経験しないとわからないかも知れませんね(社内判定はやっていますが、まだ実際の裁判の経験はありません)。


 ともかく、特許発明の技術的範囲の判断は、判例や裁判官の考え方を参考にするのが一番で、そういう意味で、元東京高裁判事の濱崎浩一さんが「法律知識ライブラリー5 特許・知識・商標の基礎知識」(牧野利秋編 青林書院)の「38特許発明の技術的範囲」の欄で記載している以下の考え方が非常に参考になります(何せ濱崎先生は、東京高裁の知的財産部(今の知財高裁)の元判事ですので参考にならないはずがありません!!)。


 『このように特許発明の技術的範囲を定めるには、特許請求の範囲のみならず、明細書全体の記載及び図面を参酌するのに対し、特許出願に係る発明の特許要件を審理する場合の発明の要旨の認定は、最判平3.3.8民集45巻3号123頁(※平成6年法改正により特許法第70条第2項の追加の一番の理由となったリパーゼ最高裁判決)が判示するとおり、「特段の事情がない限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない。」と解すべきである。 特許発明の技術的範囲すなわち成立している特許権の効力の及ぶ客観的範囲を定める場合と、これから特許すべき発明の特許要件を審理する場合とで、その基準が異なることは当然のことといえよう。』
 

※受験生時代、確か濱崎先生が弁理士試験の試験委員で、予備校の先生に、この本や、濱崎先生の書かれた論文を読みなさい、と言われ、この本を買ったような記憶があります。でも、弁理士になって、改めて先生の書いたものを読むと、実務上、非常に参考になります。