●これらの機能的クレームの3事件の判決について思うこと

 これらの機能的クレームの3事件の判決において、共通する理由は、特許請求の範囲に記載された機能ないし作用効果を果たし得る構成であればすべてその技術的範囲に含まれると解すると、明細書に開示されていない技術思想に属する構成までもが発明の技術的範囲に含まれ得ることとなり,出願人が発明した範囲を超えて特許権による保護を与える結果となりかねず、新規技術公開の代償として特許を与える特許法の理念(1条)に反するので、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して当該発明の技術的範囲を確定する、というものです。


 法目的(1条)に戻るのは当然良いのですが、均等論を採択したボールスプラインの最高裁判決(もしかしたらこれらの判決に全く関係ないかもしれません。)の
「・特許出願の際に将来のあらゆる侵害態様を予想して明細書の特許請求の範囲を記載することは極めて困難であり、相手方において特許請求の範囲に記載された構成の一部を特許出願後に明らかとなった物質・技術等に置きかえることによって、特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば、社会一般の発明への意欲を減殺することになり、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するばかりでなく、社会正義に反し、衡平の理念にもとる結果となる。

・このような点を考慮すると、特許発明の実質的価値は第三者が特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして容易に想到することができる技術に及び、第三者はこれを予想することができると解するのが相当である」


 という理由も考慮すれば、機能的クレームであろうと、なかろうと、特許請求の範囲および明細書の記載を逸脱しない範囲で、これらの記載から第三者が同一なものとして容易に想到し得る範囲にまで及ぶとするのが、法目的(1条)に合致するのでは、等と思いました。