●特許発明の技術的範囲について(2)

 特許発明の技術的範囲の解釈については、先日のべた元東京高裁判事の濱崎浩先生の判断に賛成しており、実際の裁判所における判断も、先生の考えた方に基づいてなされていると思います。


 つまり、従前、裁判では、特許請求の範囲のみならず、明細書全体の記載及び図面を参酌して、特許発明の技術的範囲(特70条第1項)を判断。例えば、特許法概説にも掲載されている昭和50年のオール事件の最高裁判決がその代表になります。


 しかし、平成3年最高裁のリパーゼ最高裁判決により、「特段の事情がない限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきで、特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない等の特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない。」と判示されたので、特許の裁判において、請求の範囲の記載が明確である場合に、明細書の記載を参酌して良いのか否か、今までの解釈との間で問題になりました。


 そこで、この問題に決着をつけるため、特許発明の技術的範囲の解釈においては、請求の範囲の記載が明確である場合でも、明細書の記載を参酌することを原則にするため、特許法70条第2項の「前項の場合においては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」という規定を確認的に規定(平成6年改正法の本に書かれてます)。


 そして、発明協会発行の知的財産権侵害要論 特許・意匠・商標編 第3版(竹田稔(なお、竹田先生も濱崎先生と同様、元東京高裁判事です。)著)によれば、その後出された判決、例えば、平成10年最高裁判決の燻し瓦の製造方法事件や、平成11年東京地裁の検査法事件、自動弾丸供給機構付玩具銃事件等においても、明細書の発明の詳細な説明中の目的・作用効果の記載から請求の範囲の用語の意義を解釈しているとのことです。