●平成25(ネ)10012 損害賠償請求控訴事件「護岸の連続構築方法およ

 本日は、『平成25(ネ)10012 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟「護岸の連続構築方法および河川の拡幅工法」平成25年8月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130905110209.pdf)について取り上げます。


 本件は、損害賠償請求控訴事件で、本件控訴が棄却された事案です。


 本件では、公然実施された護岸補修工事に基づく本件発明の容易想到性についての判断等が参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子、裁判官 小田真治)は、


「(5)公然実施された護岸補修工事に基づく本件発明の容易想到性について


ア時機に後れた攻撃防御方法

 控訴人は,控訴審に至って,新たな無効事由を主張する。当該主張は,平成13年に実施された滝の川工事で公然実施された滝の川発明に基づくものであるところ,滝の川工事に関する記載は,遅くとも原審口頭弁論終結以前には,被控訴人技研及び技研施工のホームページに掲載されていたと認められるから(甲61),時機に後れている。また,時機に後れたのは控訴人の過失によるものであるし,新たな無効事由の主張は,訴訟の完結を遅延させるものであるから,上記主張を却下する。なお,念のため,控訴人の主張について判断すれば,次のとおり,控訴人の主張は採用できない。


イ滝の川発明の公然性について

 滝の川工事で実施された施工方法の一部は,地中で行われているものであって,外見からはどのような工事が行われているかは判然としない。


 この点について,控訴人は,本件特許の出願時までに保有する行政機関に対する情報公開によって入手が可能となった滝の川工事の竣工図(乙74の3ないし74の6)を参照すれば地中で行われた部分についても公然性を充たし得るとする。


 これらの竣工図には,「基礎コンクリート(18N/mm2)」あるいは「間詰めコンクリート(18N/mm2)」を表す線と鋼矢板を表す線が交差して描かれている。しかし,「基礎コンクリート」及び「間詰めコンクリート」は,「18N/mm2」との強度を示す表示が直後に指示されていることからしても,地中の既存の構造物を指すのではなく,既設護岸のコンクリートブロックを撤去した後に,鋼矢板前面の露出した基礎地盤を被覆するために新たに打設するコンクリート層を指すと解するのが相当である。


 そうすると,前記竣工図の記載をもってしても,滝の川工事のうち,地中で行われている工程については,外見からは知ることができず,地中で行われる工程については公然と実施したとまでは認められない。


 そうすると,滝の川発明に基づいて本件発明が容易想到であるとする控訴人の主張は,失当である。


ウ本件発明の容易想到性について

 滝の川発明について公然性を肯定したとしても,滝の川工事においては,当初はコンクリート護岸を避けた陸側に鋼矢板を打ち込む計画であったところ,31枚目か32枚目の鋼矢板について,予想外の地中の障害物を打ち抜いたため,工事法線を少しずつ陸側にずらし,鋼矢板2枚分のみ地中の障害物を打ち抜いたものであることが認められる(甲61)。


 そして,この地中の障害物がコンクリート護岸の一部であったか否かも判然としない(乙70の4,乙72の5の記載は推定にすぎない。乙74の3ないし74の6の記載からは,コンクリート護岸の一部であったとは認定できないことは前記イのとおりである。)のであるから,滝の川発明がコンクリート護岸を打ち抜くものであるとの前提の控訴人の主張はこの点で失当である。


 また,仮に,地中の障害物がコンクリート護岸の一部であったとしても,滝の川発明と本件発明とを対比すると,本件発明は「コンクリート護岸を打ち抜いて連続壁を構築」する方法であるのに対して,滝の川発明は,「(鋼矢板の一部について)予想外にコンクリート護岸の一部を打ち抜いて連続壁を構築」する方法であるとの点で相違する。控訴人の指摘する各文献には,コンクリート護岸を敢えて打ち抜き,これを有効活用する点については,何ら言及されるものではないから,滝の川発明に控訴人の指摘する各文献に記載の技術を適用しても,本件発明に至るものではない。この点からしても,控訴人の指摘は失当である。」


5原判決84頁14行目から19行目までを,次のとおり改める。


「また,控訴人は,被控訴人技研が技研施工と別法人であり,本件発明を実施しているとはいえないから,民法709条による損害を被っていないと主張する。しかし,技研施工は被控訴人技研の完全子会社であること,被控訴人技研は本件発明に係る工法を用いた護岸工事を技研施工に受注させていたこと,被控訴人技研と技研施工は本店所在地と東京での拠点が同一建物内であり,被控訴人技研の代表取締役は技研施工の役員を兼務していること(甲50ないし52)を考慮すれば,被控訴人技研は,本件JVの不法行為によって,技研施工の株式価値の上昇益を通じて通常得られたはずの利益を得ることができなかったと認めることができるのであって,控訴人の上記主張は,採用することができない(最高裁平成元年髻第1400号同5年9月9日第一小法廷判決・民集47巻7号4814頁参照)。」

6以上によれば,控訴人の本件控訴は理由がない。よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。