●平成24(行ケ)10454 審決取消請求事件 商標権「KUMA」

 本日は、『平成24(行ケ)10454 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「KUMA」平成25年6月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130701091823.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録無効審判の認容審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、まず、取消事由1(7号該当の判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 池下朗、裁判官 新谷貴昭)は、


『2取消事由1(7号該当の判断の誤り)について

 本件商標と引用商標の類似性及び誤認混同のおそれについては,上記のとおりである。

 前記1(3)アの認定事実から明らかなように,被告がスポーツシューズ,被服,バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業として著名であり,引用商標が被告の業務に係る商品を表示する独創的な商標として取引者,需要者の間に広く認識され,本件商標の指定商品には引用商標が使用されている商品が含まれていること,本件商標を使用した商品を販売するウェブサイト中に,「北海道限定人気パロディ・クーマ」,「『クーマ』『KUMA』のTシャツ赤フロントプリントプーマPUMAではありません」,「注意プーマ・PUMAではありません」,「『クーマ』『KUMA』のTシャツ黒フロントプリント注プーマ・PUMAではありません」,「プーマ・PUMAのロゴ似いるような。」,「『クーマ』『KUMA』のTシャツ黒バックプリント注意プーマPUMAではありません。」,「プーマ・PUMAのロゴに似ているような似ていないような。」と記載されていること(甲18,19),原告は日本観光商事社のライセンス管理会社であるが(弁論の全趣旨),日本観光商事社は,本件商標以外にも,欧文字4つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標や,他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願し(甲4,5,14),商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともあること(甲15,16)が認められる。


 これらの事実を総合考慮すると,日本観光商事社は引用商標の著名であることを知り,意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い,引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え,全体として引用商標に酷似した構成態様に仕上げることにより,本件商標に接する取引者,需要者に引用商標を連想,想起させ,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け,原告は上記の事情を知りながら本件商標の登録を譲り受けたものと認めることができる。


 そして,本件商標をその指定商品に使用する場合には,引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力,ひいては被告の業務上の信用を毀損させるおそれがあるということができる。


 そうすると,本件商標は,引用商標に化体した信用,名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので,商標を保護することにより,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり,公正な取引秩序を乱し,商道徳に反するものというべきである。


 したがって,本件商標は7号に該当するとの審決の判断に誤りはなく,取消事由1は理由がない。』

 と判示されました。