●平成23(ワ)13054 特許権侵害差止等請求事件「剪断式破砕機の切断

 本日は、『平成23(ワ)13054 特許権侵害差止等請求事件 特許権民事訴訟「剪断式破砕機の切断刃」平成25年5月23日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130523155814.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止等請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、争点2(原告の損害)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 松川充康、裁判官 西田昌吾)は、


『2争点2(原告の損害)について


(1)被告が被告製品の販売によって得た利益


 ・・・省略・・・


(2)寄与度減額の可否

 特許法102条2項により,特許権を侵害した者がその侵害行為により利益を受けているときは,その利益の額が特許権者の受けた損害額と推定されるが,特許発明の実施が被告製品の売上げに寄与した度合によっては,上記損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるものと解される。


 被告は,本件特許発明の切断刃は,交換装置と共に利用されて初めて技術的な貢献をするものであり,切断刃自体は,公知の切断刃の一部分に極めてありふれた単純な構造の付加を行っただけの物品であるから,本件特許発明は,被告製品全体のうち,せいぜい公知の切断刃の物品に付加された構成による利用価値を高めるだけであり,被告製品の購買動機に影響を与えるものではないと主張する。確かに,被告製品は,剪断式破砕機用切断刃であり,対象物を切断することを目的とするが,本件特許発明は,切断刃の取外し作業の効率性を高めるものであり,切断の機能自体に関わるものではない。



 しかし,被告製品のような分割式の切断刃自体は公知のものであり(乙B1,本件明細書段落【0004】),本件特許発明の実施品たる構成を備え,切断刃の取外し作業の効率性を高めている点を除き,格別の特徴を有するわけではないのであるから,本件特許発明の実施品であることこそが被告製品にとって最も重要な差別化要因であったといえる。現に証拠(甲5〜11,乙A29)及び弁論の全趣旨によれば,被告から被告製品を購入した顧客らは,被告製品の「輪形凹部3で形成した係合部」と係合する切断刃交換装置を保有しており,被告製品が本件特許発明の実施品であるからこそ発注,購入したものと認められる。


 したがって,本件特許発明の実施が被告製品の売上げに寄与した度合は,むしろ大きいというべきであって,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情があったとは認められない。


 なお,被告製品を購入した大栄環境株式会社の担当者は,切断刃交換装置を保有しておらず,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っていると述べる(乙A30)。しかし,前記1(2)のとおり,被告製品の構成を有する以上,本件特許発明の技術的範囲に属すると認められるところ,被告は,いずれも顧客から指示された仕様に従って被告製品を製造,販売したことが認められる。また,このような事情及び証拠(甲10,11)によれば,大栄環境株式会社は,原告の関連会社から切断刃交換装置を購入していたことも認められ,他にこの認定を妨げるに足りる証拠はない。そのため,ハンマーでたたいて切断刃の取り外しを行っているという上記担当者の陳述内容が真実であったとしても,損害額の推定の全部又は一部が覆滅されるべき事情とすることはできない。


 また,被告の担当者は,被告製品の製造当時,「輪形凹部3で形成した係合部」を備えることの技術的意義を理解しておらず,ただ顧客からの指示どおりに製図及び製作を行ったと述べるが(乙A29),そのような事情は,原告に対して賠償すべき損害額を減額する理由にはならない。


 したがって,本件特許発明の寄与度が小さいことを理由に損害額が減額されるべきである旨の被告の主張は採用できない。


 ・・・省略・・・


3差止請求について

 被告は,被告製品の製造,販売を現時点では行っていない旨主張するが,本件の経過などに照らせば,被告がその製造,販売を行うおそれはなお否定できないため,被告製品の製造・販売等の差止め及び廃棄を求める請求には理由がある。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。