●平成23(ワ)29563 損害賠償請求事件 商標権「Balcony AND Bed」

 本日は、『平成23(ワ)29563 損害賠償請求事件 商標権「Balcony AND Bed/バルコニーアンドベッド」平成24年7月31日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120801154300.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標権に基づく損害賠償請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、争点1(被告の商標権侵害の有無)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田真史、裁判官 石神有吾)は、


『1争点1(被告の商標権侵害の有無)について

(1)被告標章と本件登録商標との類似性

 被告標章は,別紙標章目録記載のとおり,上段の「」の構成部分(以下「「BALCONY AND “SUN”BED」部分」という。)と下段の「」の構成部分(以下「「CRUSING」部分」という。)とを組み合わせた結合商標である。


 ところで,商標法37条1号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,称呼,観念等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ,その商標を使用した商品又は役務につき出所を誤認混同するおそれがあるか否かによって全体として類似するかどうかを考察すべきものであり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,その構成部分全体を対比して類否を判断するのを原則とすべきものであるが,取引の実際においては,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない商標は,必ずしも常にその構成部分全体によって称呼,観念されるとは限らず,その構成部分の一部だけによって称呼,観念され,1個の商標から2個以上の称呼,観念が生ずることがあることに照らすならば,結合商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の構成部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合,さらには,各構成部分の結合の態様によって全体の構成中需要者の注意を強くひきやすい部分がある場合などには,当該構成部分の一部を要部として摘出し,この要部と他の商標とを比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものと解するのが相当である。

 そこで,まず,上記の観点から,被告標章の構成中,「BALCONY AND “SUN”BED」部分を要部として摘出して本件登録商標との対比を行うことにより商標そのものの類否を判断することの適否について検討し,その上で,被告標章と本件登録商標の類否について検討することとする。


 …省略…


b以上を総合すると,本件登録商標と被告標章の要部とは,称呼及び観念において類似し,「バルコニーアンドベッド」が,平成23年当時には,原告が商品展開をしている服飾ブランドとして,ファッションに興味がある20代ないし40代の女性の需要者において相当程度知られていたことなどの取引の実情の下においては,被告標章が本件登録商標の指定商品の「被服」に含まれる婦人用被服に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものといえるから,本件登録商標と被告標章とは全体として類似しているものと認められる。


(ウ)これに対し被告は,?被告標章の「BALCONY AND “SUN”BED」部分の称呼と本件登録商標の称呼は,明確に聴別できる,?被告標章の「BALCONY AND “SUN”BED」部分には,「SUN」の語が入るばかりか,この文字が,ダブルクォーテーションマークにより囲われ,強調されており,それにより被告標章の外観から受ける印象は,本件登録意匠と相当異なるものとなっている,?被告標章の「BALCONY AND “SUN”BED」部分から日光浴をするにふさわしい太陽光の強い南国リゾートのイメージが喚起されるのに対し,本件登録商標から,このようなイメージが生じ得ないから,被告標章は,本件登録商標とは観念の点においても全く異なるなどとして,被告標章の「BALCONY AND “SUN”BED」部分と本件登録商標とは,称呼,外観及び観念のいずれの点においても異なるから,被告標章は,本件登録商標と類似しない旨主張する。


 しかしながら,上記?の点については,被告標章の「BALCONY AND “SUN”BED」部分から看者において直ちに日光浴をするにふさわしい太陽光の強い南国リゾートのイメージが喚起されたり,連想されるものとは認め難く,また,上記?及び?の点を勘案しても,前記(イ)bのとおり,本件登録商標と被告標章の「BALCONY AND “SUN”BED」部分(要部)とは,称呼及び観念において類似するものと認められ,被告標章が本件登録商標の指定商品の「被服」に含まれる婦人用被服に使用された場合には,その商品の出所について誤認混同を生じるおそれがあるものといえるから,被告の上記主張は,採用することができない。


 …省略…


(3)まとめ

 以上によれば,被告が被告標章が付された被告各商品を販売した行為は,本件登録商標に類似する商標の使用(商標法37条1号)に当たり,本件商標権の侵害とみなす行為に該当するものと認められる。』

 と判示されました。