●平成24(行ケ)10026 審決取消請求事件 意匠権「側部観察窓付き容

 本日は、『平成24(行ケ)10026 審決取消請求事件 意匠権 行政訴訟「側部観察窓付き容器」平成24年7月4日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120709100555.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(審判における手続違背)および取消事由2(引用例及び周知例の公然性に係る判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 井上泰人、裁判官 荒井章光)は、


『1取消事由1(審判における手続違背)について

(1)原告は,周知意匠1ないし3は,普遍的な原理や当業者にとって極めて常識的,基礎的な事項で,立証が不要な程度に周知性が高いものではないから,原告に対して反論の機会を与えるために,拒絶理由の通知をすべきであった(意匠法50条3項,特許法50条)ところ,本件各審決は,これを怠ったものであり,重大な手続違背があると主張する。


(2)しかしながら,周知意匠は,その分野において一般的に知られ,当業者であれば当然知っているべき意匠をいうにすぎないのであるから,審判手続において拒絶理由通知に示されていない周知例を加えて創作非容易性がないとする審決をした場合であっても,原則的には,新たな拒絶理由には当たらないと解すべきである。


 本件各審決は,周知例1ないし3に基づいて,「容器本体の周面において垂直に細長い透明な観察窓を設けた点」が周知意匠であり,観察窓の長さと位置につき,容器本体に占める比率の変更は,当該分野において適宜普通に行われているものであること,本願各意匠のような観察窓の態様は,ごくありふれた態様から選択した程度にすぎないものであるとするものである。


 そして,本願第1意匠の拒絶査定(甲1−7)についてみると,本願第1意匠は,本願優先日前より知られた態様の容器本体胴部に,例えば引用例2のように,本願優先日前よりごく普通に行われている内容物確認のための垂直帯状窓を設けたにすぎないとして,創作非容易性を否定したものである。原告は,平成22年7月26日付け意見書(甲1−6)において,これを争い,拒絶査定不服審判手続においても,同様に争っているものである。本願第2意匠ないし本願第8意匠についても,同様である。


 そうすると,本件各審決は,「容器本体のうち,周面の正面中央に上端から下端まで垂直に細長い透明な観察窓を設けた点」に関し,周知例を追加するものにすぎず,当該構成が周知であること,本願各意匠がごくありふれた態様から選択した程度にすぎないものであることについては,原告も十分反論の機会が与えられていたものというべきである。


(3)以上からすると,周知意匠1ないし3につき,拒絶理由の通知をしなかったことについて,本件各審決に手続違背は認められず,原告の主張は採用できない。


2取消事由2(引用例及び周知例の公然性に係る判断の誤り)について


(1)原告は,引用例2について,本願優先日の約1年11か月前に大韓民国において発行され,特許庁が受け入れてからも約1年7か月しか経過しておらず,実際に特許庁のデータベースに不特定の人間がアクセスしたか否かが不明である以上,引用例2は,意匠法3条2項所定の「公然知られた形状等」に当たるということはできないと主張する。


(2)しかしながら,意匠法3条2項は,「日本国内又は外国において」公然性を有する意匠を要件として定めるところ,引用例2が,本願優先日の約1年11か月前に大韓民国において発行されたものである以上,少なくとも同国において公然知られたものとなっていた事実を優に推認することができるものである。


 また,特許庁が受け入れてから本願優先日までに約1年7か月が経過している以上,日本国内においても,同様に公然性を認めることができる。


(3)原告は,引用例1,3及び4並びに周知例1ないし3についても,同様に公然性を否定するが,平成8年9月9日発行の引用例1,同月19日発行の引用例3,昭和62年12月26日公開の引用例4,平成16年3月4日公表の周知例1,平成14年6月11日公開の周知例2及び平成15年1月15日公開の周知例3についても,同様に,公然性ないし周知性を認めることができることは明らかである。


(4)原告の主張はいずれも採用できない。』


 と判示されました。