●平成23(行ケ)10332 審決取消請求事件 商標権「電装現代仏壇」

本日は、『平成23(行ケ)10332 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「電装現代仏壇」平成24年5月31日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120531152215.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決に対する審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1及び2についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 八木貴美子、裁判官 小田真治)は、


『1 取消事由1及び2について

(1) 商標の類否判断

 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最三小判昭和43年2月27日民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最一小判昭和38年12月5日民集17巻12号1621頁,最二小判平成5年9月10日民集47巻7号5009頁,最二小判平成20年9月8日裁判集民事228頁561頁参照)。


 上記の観点から,本件商標と引用商標1ないし3の類否について判断する。

(2) 本件商標
ア 本件商標の特徴的部分

 本件商標は,「電装現代仏壇」の文字からなり,構成文字は同じ大きさ,同じ書体で等間隔に記載され,全体として,極めてまとまりよく一体的表記されている。このような点を考慮すると,本件商標は,その全体が,特徴的部分であるということができる。もっとも,本件商標の指定商品が「仏壇」であることに照らすと,本件商標中の「仏壇」部分は,商品の出所を識別する機能はないか,又は著しく弱いといえることから,本件商標の特徴的部分は,「電装現代」部分にあると解することもできる。


 これに対し,原告は,本件商標中の「電装」部分は,仏壇の効能や用途を示すための表記であるから,本件商標は,「現代仏壇」部分が特徴的部分であるとも主張する。


 しかし,原告の主張は,採用することはできない。その理由は,以下のとおりである。


 すなわち,証拠によれば,?「電装」とは一般に,「電気関係の装置を備えつけたり,電気配線をしたりすること」の意味を有する(甲5)こと,?原告発行の平成7年版カタログ(甲6)には,「院玄電装用」等の記載があること,?平成7年に名古屋仏具卸商協同組合が発行したカタログ(甲59)や平成7年に有限会社ルーツが発行したカタログ(甲61の1)には,「院玄灯用電装品」,「リン灯用電装品」,「ローソク灯電装品」,「ミニローソク灯電装品」等の記載があること,?昭和54年に八祥会が発行したカタログ(甲60の1)には,「仏壇燈明用電装品」,「院玄灯呂用電装」との記載があること,?実開平2−147086号公報(甲62)では,仏壇に使用する電気式の輪燈を「輪燈電装装置」と称していること,?仏壇内部を照らすものとして電気式の照明器具等が利用され,照明器具付きの仏壇は遅くとも平成7年からは販売されていたこと(甲11ないし19),以上の各事実が認められる。


 これらの事実に照らせば,本件商標の登録査定時以前にも,電気による照明器具の備えられた仏壇や葬祭用具が存在し,また,「電装」の文字が仏壇や葬祭用具に関連して用いられていた事実を認めることができる。しかし,上記「電装」の表記態様は,いずれも「電装」の前後に「品」,「用」,「装置」が付加されており,「電装」単独で仏壇の機能や用途を表すものとして使用されている例がないこと,また,前記?と?は同一の製品に係るカタログであること等に照らすと,本件商標の登録査定時に,取引者・需要者が,「電装」部分を,仏壇の効能や用途を意味すると一般的に認識するとまで解することはできない。したがって,本件商標の特徴的部分は,「現代仏壇」であるとの原告の主張は,採用できない。


イ 本件商標の外観,称呼及び観念上記認定を前提とすると,本件商標は,「電装現代仏壇」の漢字6文字をゴシック体で横書きしてなる外観を有し,その構成文字に相応し「デンソウゲンダイブツダン」及び「デンソウゲンダイ」の称呼を生じる。また,取引者・需要者が,本件商標の文字の組み合わせから,確定的な意味を把握することは困難であり,本件商標が,特定の観念を生じるとまではいえない。


(3) 引用商標1ないし3の外観,称呼及び観念

 引用商標1は,「現代」の文字からなり,「ゲンダイ」の称呼及び「現代」の観念を生じる。


 引用商標2は,「現代仏壇」の文字からなり,「ゲンダイブツダン」の称呼を生じ,「現代的な仏壇」等の観念を生じる。また,引用商標2中の「仏壇」部分は,指定商品を指すものであって商品の出所識別機能を果たし得ない点を考慮すると,引用商標2の特徴的部分は,「現代」部分に限定されるため,引用商標2からは,「ゲンダイ」の称呼及び「現代」の観念も生じ得る。


 引用商標3は,黒塗りの隅丸四角形内に「現代」と「仏壇」の文字が上下二段に白抜きで,全体的にまとまりよく表記されている。引用商標3からは,「ゲンダイブツダン」の称呼を生じ,「現代的な仏壇」等の観念を生じる。また,引用商標2と同様に,「仏壇」部分は,指定商品を指すものであって商品の出所識別機能を果たし得ない点を考慮すると,引用商標3の特徴的部分は,「現代」部分に限定されるため,引用商標3からは,「ゲンダイ」の称呼及び「現代」の観念も生じ得る。


(4) 本件商標と引用商標1ないし3との類否

 本件商標「電装現代仏壇」及びその構成部分である「電装現代」と,引用商標1ないし3を対比すると,両者は,?それぞれの文字数,構成文字及び表記態様が異なることから,外観において相違し,?本件商標が「デンソウゲンダイブツダン」又は「デンソウゲンダイ」の称呼を生じるのに対し,引用商標1ないし3は,「ゲンダイ」又は「ゲンダイブツダン」の称呼を生じ,その構成する音数や先頭の「デンソウ」との称呼の有無において異なることから,称呼において相違し,?観念においても,相紛れる恐れはない。


 そうすると,本件商標と引用商標1ないし3とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれはなく,その他本件商標と引用商標1ないし3について誤認混同を生じるおそれがあると認められる取引上の事情もないから,本件商標と引用商標1ないし3は類似しない。


 以上によれば,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するものではないとした審決の判断に誤りはなく,取消事由1及び2についての原告の主張は,採用の限りでない。』

 と判示されました。