●平成23(行ケ)10042 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

 本日は、『平成23(行ケ)10042 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成23年07月19日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110721085121.pdf)について取り上げます。

 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由1(本願商標の出所識別標識としての認定の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、


『2 取消事由1(本願商標の出所識別標識としての認定の誤り)について

(1) 原告は,審決が,本願商標について,「魚図形は,本願指定商品である「釣り用餌」の対象となる魚を認識させるにすぎないから,「キープ」の文字とを一体として認識するべき特段の事情もないものである。」,「本願商標は,前述のとおり,魚図形部分は,自他商品の識別標識としての機能を有するものではなく,「キープ」の文字と「BASIC」の文字とは,観念上も視覚上も一体とすべき理由がないものであり,「キープ」の文字部分も取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。」と認定したことが誤りであると主張する。


 しかしながら,本願商標は,前記1(1)のとおり,そのほぼ中央部に強調して大きく「キープ」の文字が縦書きされており,当該文字部分は,外観上,相対的に小さな「BASIC」の文字と離間して配置されて結合しておらず,頭から背中の部分を特殊化することなく配した魚の図形は,「キープ」の文字部分の背景となるにすぎないような地模様の態様であり,しかも,観念上それぞれの文字と図形の間に関連性がないことを考慮すれば,「キープ」の文字部分は,本願商標の指定商品の取引者,需要者に注目されて強い印象を与えるものと認められ,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとの審決の上記認定に誤りはないものといわなければならない。

(2) この点について原告は,楕円に囲まれた「BASIC」の文字と魚図形と当該魚図形に重ねて記載されたペットマークとが配置された商標を使用して,「釣り用餌」を販売していること,楕円に囲まれた「BASIC」の文字,楕円に囲まれた「BASIC」の文字と魚図形,楕円に囲まれた「BASIC」の文字と魚図形と当該魚図形に重ねたペットマークとを配置した複数の結合商標を,それぞれ商標登録していること,審決前に,釣り専門雑誌において「BASIC」ブランドについての広告や原告商品を用いた実演記事を掲載していることなどを根拠に(甲13〜27),遅くとも審決時には,楕円に囲まれた「BASIC」の文字,又は,所定のデザインで配置された楕円に囲まれた「BASIC」の文字と魚図形を有する商標は,原告の商品群を表示する出所識別標識として,釣り業界の取引者,需要者に相当程度広く認識されているから,「キープ」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとの審決の認定が誤りであると主張する。

 しかしながら,本願商標のほぼ中央部に強調して大きく「キープ」の文字が縦書きされていることは,前記認定のとおりであり,仮に,楕円に囲まれた「BASIC」の文字と魚図形と当該魚図形に重ねたペットマークとを配置した標章が,原告の販売する商品群を表示する出所識別標識として,本願商標の指定商品の取引者,需要者に一定程度認識されているとしても,「BASIC」の文字が一般に通用している単語であることと,魚図形が地模様の印象を持つことに照らせば,「キープ」の文字こそが本願商標において識別力を有する要部であることは明らかである。したがって,原告主張の上記事実関係により,本願商標に接した上記取引者,需要者が「キープ」の文字部分に注目するという事実が左右されるものではない(なお,原告が援用する他の商標登録事例(甲15〜23)は,「キープ」の文字を含まない部分に識別力が認められるか(甲15,16),あるいは,他の文字に識別力が認められるもの(甲17〜23)であって,「キープ」の文字に識別力を認めるべき本願商標とは異なる。本願商標において,「BASIC」の文字と魚図形のみで出所識別機能を有するものでないことは明らかである。)。


 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。


(1) また,原告は,本願商標の構成部分の一部である「キープ」の文字を抽出し,この部分だけを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することが,つつみのおひなっこや事件最高裁判決における結合商標についての類否判断の枠組に反すると主張する。

 しかしながら,「BASIC」及び「キープ」の文字と魚図形とから成る本願商標において,大きく縦書きされた「キープ」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えることは,前示のとおりであり,この点を抽出した審決に誤りはない。原告援用の最高裁判決は,「つつみのおひなっこや」の一連の文字から成る登録商標の事案に即してその説示を展開したものであって,事案が異なる本件においてその説示をそのまま当てはめるのは相当でなく,原告の上記主張は,採用することができない。』

  と判示されました。


  詳細は、本判決文を参照して下さい。