●平成22(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権「油圧ショベルの油

 本日は、『平成22(行ケ)10305 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟油圧ショベルの油圧配管構造」平成23年06月23日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110624084034.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の認容審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2(相違点1に関する判断の当否)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、

『4 取消事由2(相違点1に関する判断の当否)について

(1) 審決は,油圧ショベルに関する刊行物1記載の発明に,バックホウ付きのトラクタに関する刊行物2記載の発明を適用して,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは容易であると判断した。


 一般的な油圧ショベルとバックホウ付きトラクタとの間には,原告が主張するように,上部旋回体が旋回動作をするか否か等の違いがある。


 しかしながら,油圧ショベルとバックホウ付きトラクタは,一般的に油圧式の建設機械であるという点で共通し,切削及び積込みを行うという機能の点でも同種に分類されること(甲7−
1〜7−3),両方の機械を開発する企業もあること(乙7の1〜7の3),市場において,上部旋回体のないバックホウローダーから上部旋回体を備えた油圧ショベルへの機種の変遷があった経緯があること(乙8)などからすると,これらの機械はいずれも同一の技術分野に属するものと認められる。


 また,上記2のとおり,刊行物1記載の発明は,撓んだ油圧ホースがスイングポストやブーム等(作業機)に接触し,耐久性が低下するという課題の解決を目的とするものである。同様に,刊行物2記載のバックホウ付きトラクタも,「…油圧システムに最大稼働を許すに足るだけの十分な長さのホースがなくてはならない。必然的に,油圧ホースは相当に嵩張ったものとなりえ,バックホウ機構の本来の動作に対する障害となる可能性がある。」(1欄38行〜42行,翻訳文1欄19行〜21行),「…石やその他の物質がホースに引っ掛かるなどとしてホースが傷つかないように,支持フレームの下を通るホースの下方にホースガードを備え…」(1欄49行〜52行,翻訳文1欄26行〜27行)との記載によれば,油圧ホースの余剰分が作業機の運動を遮り,あるいは,石などと接触して耐久性が低下するという課題を前提とした上で,油圧配管を下方に設置し,油圧配管のガードを用いたものであって,解決すべき課題も刊行物1記載の発明と共通している。


 このような技術分野や解決課題の共通性からすると,油圧ショベルの技術分野に属する当業者が,バックホウ付きトラクタの技術手段の適用を試みることは,通常の創作能力の発揮にすぎず,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用する動機付けを一般的に否定することはできない。


 以上のとおりであるから,複数の油圧配管がピンの側方近傍を通過する油圧ショベルに関する刊行物1記載の発明に,複数の油圧配管がシリンダの下方の中心近傍を通過する刊行物2記載の発明を適用して,複数の油圧配管が「ピンの下方の中心近傍」を通過させるようにすることについての容易想到性を否定することはできず,むしろ,そうすることにより,複数の油圧配管が「下部走行体と車体突出部との間」を通過することは自明であるといえる。したがって,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用して,相違点1に係る本件発明1の構成とすることは容易に想到し得たとする審決の判断に誤りはない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。