●平成23(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権「出版大学」

本日は、『平成23(行ケ)10003 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「出版大学」平成23年05月17日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110518115421.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法4条1項7号該当性についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 真辺朋子、裁判官 田邉実)は、

『4 商標法4条1項7号該当性について

 このように,日本においては学問ないし学術分野として「出版学」と称して,出版に関する学術の研究等がなされ,大学における教授の対象となっていること,「教育内容を想起させる語+『大学』」という組合せからなる名称の大学が少なからず存在することからすれば,本願商標を構成する「出版大学」の文字部分は,学校教育法に基づいて設置された大学の名称を表示したものであるかのように看取され観念される可能性が高いというべきである。


 そして,本願商標の指定役務には「技芸・スポーツ又は知識の教授」があり,この中には,学校教育法で定める学校において知識等を教授し又は教育する役務が含まれるところ,学校教育法に基づいて設置された大学の名称(出版大学)と看取される可能性の高い文字部分を含む本願商標を上記役務に使用するときには,これに接する一般需要者に対し,当該役務の提供主体が,あたかも学校教育法に基づいて設置された大学であるかのような誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。


 学校教育法は,1条で「この法律で,学校とは,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,大学及び高等専門学校とする。」,3条で「学校を設置しようとする者は,学校の種類に応じ,文部科学大臣の定める設備,編制その他に関する設置基準に従い,これを設置しなければならない。」,135条1項で「専修学校各種学校その他第1条に掲げるもの以外の教育施設は,同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。」と規定しているところ,これは,一定の教育又は研究上の設置目的を有し,法令に定める設置基準等の条件を具備する同法1条に定める学校の教育を公認するとともに,1条に掲げる学校以外の教育施設が1条掲記の「学校の名称」を用いることによって,これに接した者が当該教育施設の基本的性格について誤った認識を持ち,不利益を被らないようにするためのものと解される。


 このような学校教育法の規定からすると,「大学」との名称を用いる教育施設は,学校教育法所定の最高学府であると一般に認識されるものであるから,本願商標によって生じる前記のような観念からすると,本願商標が使用される役務次第では,このような意味を持つ「出版」という学問,研究分野についての大学に関連する商標との認識が持たれることになりかねない。


 原告が主張するところによっても,原告は教育施設を擁するものではないから,「大学」という名称を用いても直ちに学校教育法135条1項の規定に違反するとはいえないかもしれない。しかしそうだとしても,学校教育法に基づいて設置された大学を表示するものと誤認されるおそれのある本願商標をその指定役務に含まれる「技芸・スポーツ又は知識の教授」の役務に使用することになれば,これに接した需要者に対し,役務の提供主体があたかも学校教育法に基づいて設置された大学であるかのように誤認を生じさせることになり,教育施設である「学校」の設置基準を法定した上で,この基準を満たした教育施設にのみその基本的性格を表示する学校の名称を使用させることによって,学校教育制度についての信頼を維持しようとする学校教育法135条1項の趣旨ないし公的要請に反し,学校教育制度に対する社会的信頼を害することになるというべきである。


 したがって,本願商標は公の秩序を害するおそれがある商標というべきであり,本願商標が商標法4条1項7号に該当するとした審決の認定,判断に誤りはない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。