●平成22(行ケ)10365 審決取消請求事件「過負荷回避用電力コントロ

 本日は、『平成22(行ケ)10365 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「過負荷回避用電力コントロールシステム」平成23年04月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110428152541.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由4(相違点3に関する容易想到性の判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 武宮英子、裁判官 齊木教朗)は、


『4 取消事由4(相違点3に関する容易想到性の判断の誤り)について


(1) 原告は,「引用発明は,停止後に再投入するまで3分も待機するので,所定機器の停止時間が長くなり,ユーザにとって不都合である上,電力ピークとして3分も確保する必要はなく,3分も確保することは,電力ピークが過ぎてからも不必要に機器を停止させることにつながる。これに対し,本願発明は,所定機器の停止後,15〜30秒で復帰させるので,所定機器の停止を最小限に抑えることができるものであるから,第二設定時間を15〜30秒とすることに技術的な臨界的意義がある。したがって,本願発明について,第二設定時間を15〜30秒とすることに技術的な臨界的意義は認められないとした審決は誤りである。」と主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。


 本願発明は,所定機器を停止してからこの所定機器を動作状態に復帰させるまでの時間である第二設定時間について,「前記第二設定時間は,15〜30秒に設定される」と特定されており,本願明細書(甲3)を参照すれば,「第二設定時間は,電力消費(過負荷)のピーク持続時間を考慮して定められ,本実施例では通常,15〜30秒に設定される。」(段落【0034】)と記載され,電力消費(過負荷)のピーク持続時間を考慮して定めることは示されているものの,下限を「15秒」,上限を「30秒」とした根拠は記載されておらず,第二設定時間を「15〜30秒」に限定した技術的意義については示されていないというべきである。


  他方,引用例1には,本願発明の第二設定時間に対応する時間を「3分」としたことが,また,引用例2には,同じく「15秒」としたことがそれぞれ記載されており,いずれの引用例にも,前記時間を特定した根拠については明示されていないことからして,前記時間は,少なくとも15秒ないし3分の範囲であれば,当業者が適宜設定できる値であると考えるのが自然である。


 この点,原告は,電力ピークとして3分も確保することは不要かつ不都合である旨主張するが,それを前提としても,第二設定時間を「15〜30秒」に限定した技術的意義が開示されているとはいえない。


 したがって,引用発明において,本願発明の第二設定時間に対応する時間を「15〜30秒」とすることは,当業者が容易に想到することができたと認められる。原告の主張は理由がない。


(2) また,原告は,「本願発明では,『停止制御部による前記所定機器の停止から第二設定時間経過後に,この所定機器を動作状態に復帰させる』ものであり,所定機器の停止時を第二設定時間の起算点とするので,必ずしも定格電流以下で復帰させなければならないものでなく,定格電流を超える電流で復帰させることもあり得る。このような構成は,定格電流になると次々と負荷を切断していき定格電流を超える時延引きはずし領域の使用を前提としない引用発明や,定格電流に戻り,かつ,15秒経過後に負荷を復帰させる引用例2記載の発明では,あり得ない構成である。したがって,原告の上記主張を,本願発明に基づく主張でないとして採用しなかった審決の判断には誤りがある。」と主張する。


 しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。


 本願発明における第二設定時間は,上記(1) のとおり,電力消費(過負荷)のピーク持続時間を考慮して定めた時間であって,所定機器を動作状態に復帰させるに当たり,供給される電流が定格電流以下であることを検出しているわけではないから,「所定時間だけ所定機器の動作を強制停止している間に,通常ほとんどの場合,他の機器の動作が停止し,電力消費(過負荷)のピークは過ぎるので,前記所定機器を再起動しても問題はない。」(甲3の段落【0015】)と記載されるように,本願発明は,第二設定時間経過後に所定機器を動作状態に復帰させた結果,依然として電流が定格電流を超えていることがあり得ることを前提としているということができる。


 したがって,原告の上記主張を,本願発明に基づく主張でないとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張は失当である。


 なお,引用発明や引用例2記載の発明においても,所定時間経過後に負荷を再投入するに当たり,負荷に供給される電流が定格電流以下であることを検出していることは開示されていないから,本願発明と同様に,電流が定格電流を超えている状態で復帰することがあり得ることは当然に予測できることであり,本願発明と引用発明又は引用例2記載の発明との作用効果に,格別の差異はないというべきである。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。