●平成21(ワ)26849 補償金請求事件 平成23年04月21日 東京地方裁

 本日は、『平成21(ワ)26849 補償金請求事件 平成23年04月21日 東京地方裁判所 (http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110428111219.pdf』について取り上げます。


 本件は、職務発明の対価である補償金を求めた補償金請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、職務発明の対価の請求の消滅時効の完成の有無についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第46部 裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 大西勝滋、裁判官 上田真史)は、


『1 本件発明1に係る相当の対価請求について


 前記争いのない事実等によれば,被告は,昭和50年9月10日に本件発明1の特許出願(本件出願1)をし,昭和56年9月30日に本件特許権1の設定登録を受けた後,本件特許権1は,平成7年9月10日に存続期間満了により消滅したこと,原告が本件通知によって被告に対して本件各発明に係る相当対価の請求をしたのは,平成21年3月26日であることが認められる。このような本件の事案に鑑み,まず,被告主張の消滅時効の成否(争点3)について判断することとする。


(1) 消滅時効の完成の有無

ア 原告の本件発明1に係る相当の対価の請求は,沖電線が本件特許権1の上記設定登録日から上記存続期間満了日までの間被告の許諾により本件発明1を実施したことに基づく実施料相当額をもって被告が本件発明1により受けるべき利益(特許法旧35条4項)であると主張するものであるから,被告各規程の定める実績補償に係る相当の対価を請求するものということができる。そして,実績補償に関しては,平成2年被告規程2が適用される。


 ところで,従業者等は,勤務規則等により,職務発明についての特許を受ける権利を使用者等に承継させたときは,相当の対価の支払を受ける権利を取得し(特許法旧35条3項),その対価の額については,特許法旧35条4項により勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは算定される額に修正されるが,その対価の支払時期については,そのような規定はない。


 そうすると,勤務規則等に使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきであるから,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となり(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照),また,勤務規則等にそのような条項がない場合には,勤務規則等により支払うべき対価が発生したときが相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である。』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。