●平成22(行ケ)10338 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「みずほ

 本日は、『平成22(行ケ)10338 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「みずほ」平成23年03月03日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110304110715.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録の無効審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法4条1項15号についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 井上泰人)は、


『1商標法4条1項15号について

(1)商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定役務に使用したときに,当該指定役務が他人の役務に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該指定役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信される,広義の混同を生ずるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。そして,「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定役務と他人の業務に係る役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)。


(2)本件商標と引用商標との類似性の程度

 引用商標1は,「MIZUHO」の欧文字を標準文字により横書きしたものであるところ,同商標からは,「ミズホ」の称呼,「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに,後記(3)のとおり,被告グループに属する企業が統一して使用する商標として周知著名なものとなっていることから,「みずほフィナンシャルグループ」の観念も生じる。


 引用商標2は,「MIZUHO」の欧文字を図案化したものであり,引用商標1と同様に,「ミズホ」の称呼,「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに,著名な「みずほフィナンシャルグループ」の観念も生じる。


 引用商標3は,「みずほ」の平仮名文字からなるところ,「ミズホ」の称呼,「瑞々しい稲の穂」の観念を生じるとともに,著名な「みずほフィナンシャルグループ」の観念も生じる。


 本件商標は,「みずほ」の平仮名文字からなる商標であり,引用商標1及び2に極めて類似する商標であって,引用商標3とは,称呼,外観及び観念ともに同一の商標である。

 ・・・省略・・・

(4)本件指定役務と引用商標に係る役務との間の関連性の程度

 ・・・省略・・・

オ以上のとおり,金融機関においては,法人顧客を対象として特許権著作権等の知的財産権を対象とする信託業務を行ったり,大学の持つ特許などの知的財産に関する情報を取引先に提供したり,事業の開始に必要な資金を調達・融資するなどの事業を行い,知的財産信託において,特許料の納付,実施権の付与,侵害などへの対応の役務を提供している。


 また,金融機関は,様々な経営リスクを抱える法人や個人の顧客を対象として法律相談・コンサルティング,法律に関する情報の提供や弁護士紹介サービスを行っている。信託銀行においては,遺言執行引受予諾業務の一環として遺言に関わる一連の法律業務を提供することが一般的に行われており,現に被告グループは,遺言信託受託件数において金融機関中第1位の実績を誇っている。


 さらに,金融機関においては,顧客や潜在的顧客を対象とした年金相談等,社会保険に関する相談会を行うことが広く一般的に行われている。


 金融機関の行うこれらの役務は,本件指定役務と関連性を有し,同一の者によって提供されることの多い役務であって,取引者,需要者も共通するものであり,密接な関連性を有するものということができる。


(5)出所の混同のおそれ

 以上のとおり,?本件商標が引用商標と同一ないし極めて類似する商標であること,?引用商標は,もとは普通名詞であるが,被告及び被告グループにより使用された結果,全国的に極めて高い著名性を有する商標であること,?本件指定役務と被告又は被告グループが使用する役務とが密接な関連性を有するものであることを総合勘案すれば,原告が,被告及び被告グループを表示するものとして著名な引用商標と同一ないし極めて類似する本件商標を,被告又は被告グループが使用する役務と密接な関連性を有する本件指定役務について使用した場合,その需要者及び取引者において,本件商標の下で提供される原告の役務が,例えば,被告グループに属する者,被告から引用商標の使用許諾を受けた者によるなど,被告又は被告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し,役務の出所につきいわゆる広義の混同を生ずるおそれは極めて高いといわなければならない。


 したがって,本件商標は,被告及び被告グループの業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから,商標法4条1項15号に該当する。』


 と判示されました。


 なお、本件中で引用している最高裁は、

●『平成10(行ヒ)85 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「レールデュタン事件」平成12年07月11日 最高裁判所第三小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120629363392.pdf

です。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。