●平成22(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成22(行ケ)10109 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「アミノシリコーンによる毛髪パーマネント再整形方法」平成23年02月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110228153509.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が認容された事案です。


 本件では、特許法第36条6項1号のサポート要件についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 中平健、裁判官 知野明)は、


『当裁判所は,本願明細書の請求項1ないし9の記載は,36条6項1号の規定に適合しないとした審決には,誤りがあると判断する。その理由は,以下のとおりである。


1はじめに

 36条6項1号は,「特許請求の範囲」の記載は,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要するとしている。同条同号は,同条4項が「発明の詳細な説明」に関する記載要件を定めたものであるのに対し,「特許請求の範囲」に関する記載要件を定めたものである点において,その対象を異にする。


 特許権者は,業として特許発明の実施をする権利を専有すると規定され,特許発明の技術的範囲は,願書に添付した「特許請求の範囲」の記載に基づいて定められる旨規定されていることから明らかなように,特許権者の専有権の及ぶ範囲は,「特許請求の範囲」の記載によって画される(特許法68条,70条)。


 もし仮に,「発明の詳細な説明」に記載・開示がされている技術的事項の範囲を超えて,「特許請求の範囲」の記載がされるような場合があれば,特許権者が開示していない広範な技術的範囲にまで独占権を付与することになり,当該技術を公開した範囲で,公開の代償として独占権を付与するという特許制度の目的を逸脱することになる。


 36条6項1号は,そのような「特許請求の範囲」の記載を許さないものとするために設けられた規定である。


 したがって,「発明の詳細な説明」において,「実施例」として記載された実施態様やその他の記載を参照しても,限定的かつ狭い範囲の技術的事項しか開示されていないと解されるにもかかわらず,「特許請求の範囲」に,「発明の詳細な説明」において開示された技術的範囲を超えた,広範な技術的範囲を含む記載がされているような場合は,同号に違反するものとして許されない(もとより,「発明の詳細な説明」において,技術的事項が実質的に全く記載・開示されていないと解されるような場合に,同号に違反するものとして許されないことになるのは,いうまでもない。)。


 以上のとおり,36条6項1号への適合性を判断するに当たっては,「特許請求の範囲」と「発明の詳細な説明」とを対比することから,同号への適合性を判断するためには,その前提として,「特許請求の範囲」の記載に基づく技術的範囲を適切に把握すること,及び「発明の詳細な説明」に記載・開示された技術的事項を適切に把握することの両者が必要となる。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。