● 2010年の気になった知財事件(査定系)

 ここのところ、年末にその年の気になった事件を紹介して一年の締めとしていましたが、今年は、その余裕がなかったので、新年に。


 2010年の気になった知財事件(査定系)としては、7/16の日記(http://d.hatena.ne.jp/Nbenrishi/20100716)で取り上げた、●『平成22(行ケ)10019 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「モールドモータ」平成22年07月15日 知的財産高等裁判所(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100716090324.pdf)があります。


 ソルダーレジスト知財高裁大合議事件である、●『平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「感光性熱硬化性樹脂組成物及びソルダーレジストパターン形成方法」平成20年05月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080530152605.pdf)により、新規事項追加の判断基準は、


 『「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であることを要するとした趣旨が,第三者に対する不測の損害の発生を防止し,特許権者と第三者との衡平を確保する点にあることに照らすならば,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であるか否かは,訂正に係る事項が,願書に添付された明細書又は図面の特定の箇所に直接的又は明示的な記載があるか否かを基準に判断するのではなく,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって導かれる技術的事項(すなわち,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項)との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断するのが相当である知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号平成20年5月30日判決参照)。』


 にほぼ確定したと思います。


 しかし、●『平成22(行ケ)10019 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「モールドモータ」平成22年07月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100716090324.pdf)では、さらに、

また,審決では,本件訂正が「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当すると判断しており,「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」も本件訂正前の請求項1記載の発明に含まれることを認めているのであって,本件においては,本件訂正がされたからといって,第三者に不測の損害を与える可能性のある新たな技術的事項が付加されたことを,想定することは困難である。


 とも判示されています。この判示部分からすると、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正(訂正)であれば、新規事項の追加になることはあり得ない、とも読め、勇み足のような気がします。


 つまり、この判示部分からすると、補正(訂正)が「特許請求の範囲の減縮」になっていれば、第三者に不測の損害を与えることはないので、新規事項の追加に該当することはあり得ず、明細書に明記されているか否かを問わないと解釈されると、明細書や図面の記載に基づいて審査する特許庁の審査官・審判官の立場からして、認め難いのでは、と思いました。