●平成22(行ケ)10012 審決取消請求事件 商標権「エコルクス」

 本日は、『平成22(行ケ)10012 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「エコルクス」平成22年12月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101216100215.pdf)について取り上げます。


 本件は、不使用を理由とする商標登録の取消し審判の棄却審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が認容され、棄却審決が取消された事案です。


 本件では、商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無および商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 井上泰人)は、


『2 商標法2条3項1号に基づく本件商標の使用の有無について

(1) 商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」とは,同号に並列して掲げられている「商品に標章を付する行為」と同視できる態様のもの,すなわち,指定商品を現実に包装したものに標章を付し又は標章を付した包装用紙等で指定商品を現実に包装するなどの行為をいい,指定商品を包装していない単なる包装紙等に標章を付する行為又は単に標章の電子データを作成若しくは保持する行為は,商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」に当たらないものと解するのが相当である。


(2) これを本件についてみると,前記認定のとおり,被告は,本件請求登録日以前から,本件容器に本件商標を付して販売するための準備を進めていたところ,被告が平成21年4月10日に外部会社から受領したものは,本件容器のパッケージデザインの電子データであるにすぎない。したがって,被告が上記電子データを受領し,これを保持することになったからといって,これをもって商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」ということはできない。


 むしろ,前記認定のとおり,本件商品は,同年6月11日に中国において生産が開始されたものであるから,それよりも前に我が国において本件容器で本件商品を包装することは,不可能である。そして,本件商品が本件請求登録日よりも前に我が国において,被告により本件容器で包装されたと認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告は,本件商標について,本件請求登録日よりも前の3年以内に我が国において商標法2条3項1号所定の「商品の包装に標章を付する行為」がされた事実を証明していないというほかない。


(3) よって,商標法2条3項1号に基づき本件商標の我が国における使用を認めた本件審決は,その解釈適用を誤るものといわなければならない。


(4) 以上に対して,被告は,登録商標の使用の有無を商標権者と審判請求人との総合的な利益衡量により決定されるべきである旨を主張する。


 しかしながら,商標法50条2項本文は,被請求人に登録商標の使用について証明を求めており,商標法2条3項は,「使用」の語義を並列的に規定しているところ,商標法のこれらの規定によれば,「使用」の事実の証明に当たって被告主張に係るような商標権者と審判請求人との間でいわば相対的に利益衡量をすれば足りるものと解すべき余地はない。


 よって,被告の上記主張は,採用できない。


3 商標法2条3項8号に基づく本件商標の使用の有無について

(1) 商標法2条3項8号所定の標章を付した広告等の「頒布」とは,同号に並列して掲げられている「展示」及び「電磁的方法により提供する行為」と同視できる態様のもの,すなわち,標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれることをいい,標章を付した広告等が一般公衆による閲覧可能な状態に置かれていない場合には,商標法2条3項8号所定の標章を付した広告の「頒布」に当たらないものと解するのが相当である。


(2) これを本件についてみると,前記認定のとおり,本件容器の写真が広告として掲載された本件情報誌が小売店に配達され,もって一般公衆による閲覧可能な状態に置かれたのは,平成21年5月1日である。したがって,被告が本件容器の広告写真が掲載された本件情報誌を頒布したのは,同日(平成21年5月1日)であるというべきであって,被告が前日(平成21年4月30日)に発送を行ったからといって,当該発送行為をもって本件商標を付した広告等の頒布に該当するとはいえない。そして,我が国において本件商標を付した広告等が本件請求登録日よりも前に,被告により頒布されたと認めるに足りる証拠は存在しない。したがって,被告は,本件商標について,本件請求登録日よりも前の3年以内に我が国において商標法2条3項8号所定の本件商品に関する広告の「頒布」がされた事実を証明していないというほかない。


(3) よって,前記判断に反する被告の主張は採用できない。


(4) なお,被告は,平成21年4月30日(本件請求登録日)の本件情報誌の発送行為が「頒布」に該当することを前提に,本件請求登録日の発送行為の立証をもって,商標法50条2項所定の「審判の請求の登録前3年以内」の日本国内での使用を証明した旨を主張する。


 しかしながら,上記発送行為のみでは商標法2条3項8号所定の「頒布」に該当しないことは前記のとおりであるから,被告の主張は,その前提を欠くものとして採用できない。


4 小括

 以上のとおり,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内で本件商標が使用されていたことを証明しておらず,これと判断を異にする本件審決は,取消しを免れない。』


 と判示されました。

 
 なお、同日に出された●『平成22(行ケ)10013 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「エコルクス/ECOLUX」平成22年12月15日知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101216101236.pdf) も同旨の事件のようです。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。