●平成22(行ケ)10084 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成22(行ケ)10084 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「磁気カード読み取りシステム」平成22年12月06日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101207084829.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2(引用発明の認定の誤り)について判断などが参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 塩月秀平、裁判官 清水節、裁判官 古谷健二郎)は、


『4 取消事由2(引用発明の認定の誤り)について

(1) 原告は,審決が,引用発明について,カードリーダが読み取ったデータをカードセンタ等へ送信するための通信回線等の構成を認定していないことが誤りである旨主張する。


 原告の上記主張は,取消事由1の主張,すなわち本願補正発明がクレジット会社等のサーバまでのシステム全体を対象とする発明であるという主張を前提として,引用発明においても,クレジット会社等のサーバに相当する「カードセンタ」までの構成を認定すべきというものであるが,上記3で説示したとおり,本願補正発明の認定に関する原告の主張は採用できないから,原告の上記主張はその前提を欠く。


 そうすると,本願補正発明との対比に当たっては,引用発明についても暗号化されたカードデータが復号化されるまでの構成を認定すれば足りるのであって,復号化された後の構成である通信回線等の構成は対比に不要である。したがって,審決の認定に誤りはなく,原告の上記主張は理由がない。


(2) 原告は,引用発明について,DES 方式と同様の安全性を有し,処理能力が格別高くないチップでも短時間に暗号化が行える共通鍵方式を用いるとされている点を認定すべきと主張する。


 しかし,進歩性の判断に当たっては,公知文献に記載された複数の技術思想・構成をすべて認定する必要はなく,対比に必要な範囲の構成を認定すれば足りる。引用例には,カードデータの暗号化方式として共通鍵方式の一種であるDES 方式を用いた構成がひとまとまりの技術思想として記載されているのであって,その範囲で引用発明を認定した審決の判断に誤りはない。

 したがって,原告の上記主張も採用することができない。


 以上のとおり,取消事由2は理由がない。


 ・・・省略・・・

(4) 商業的成功について

 上記のとおり,本願補正発明は,当業者が容易に想到することができたものであるから,仮に原告の製品が商業的成功を収めていたとしても,上記判断を覆すものではなく,原告の主張は採用することができない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。