●平成21(行ケ)10407審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「つゝみ」

 本日は、『平成21(行ケ)10407 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「つゝみ」平成22年04月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100430145823.pdf)について取り上げます。


 本件は、不使用取消審判の棄却審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、登録商標の社会通念上同一の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 井上泰人)は、


『1 認定事実

 証拠に弁論の全趣旨を加えると,次の事実が認められる。

(1) 被告は,かねてより,仙台市青葉区堤町で,江戸時代から伝わる工芸品で,宮城県指定伝統工芸品である堤人形という土人形の製作及び販売を家業としているものであるが,堤人形の他の製作業者は,原告のみである(甲3,5,7〜9,14,20の1,22の1,23の1,24の1,弁論の全趣旨)。


(2) なお,本件商標が「つゝみ」の平仮名文字を横書きしてなること及びその登録出願から書換登録がされて現在に至る経緯は,第2の1に摘示したとおりである。


(3) 被告は,現在,堤人形を販売する際,縦長の長方形の枠内に縦書きで,「つゝみ」と記載したゴム印のほか,その下部に,縦長の長方形を罫線で縦に3分割し,各枠内にそれぞれ縦書きで,「つゝみ人形」,「X」,「(被告の住所及び電話番号)」と記載したゴム印を,それぞれ包装紙に押捺しており,更に,当該包装紙に,横長の長方形の枠内に横書きで,「仙台銘産つゝみ人形(被告の電話番号)」と行を改めながら記載したシールを貼付している(甲19。枝番を含む。特に断らない限り,以下同じ。)ところ,そのような使用は,遅くとも平成元年ころか始められて現在に至っているものである(甲19)。また,被告は,平成18年12月ころに製作・販売した堤人形の猪の底部及び平成20年11月ころに製作・販売した堤人形の丑の底部に,いずれも長方形の枠内に縦書きで「つゝみ」と刻印し(甲20〜22),また,他の被告製作に係る堤人形についても,同様の刻印を施して販売している(甲25〜28)。


(4) 以上の使用は,「つゝみ」あるいは「つつみ」の平仮名文字を縦書きしている点で,「つゝみ」の平仮名文字を横書きしている本件商標と違いはあるが,いずれも社会通念上本件商標と同一と評価することができる。

(5) 被告は,本件商標と同一と評価し得ないというが,採用できない。

2 本件商標の使用について

(1) 前記認定事実によると,被告は,本件審判の請求の登録日である平成21年5月18日より3年前以内の時期に本件商標をその商品及び商品の包装に付し,更にこれを譲渡し,引き渡したものであって,これを使用した(商標法2条3項1号及び2号)ものということができる。

(2) この点について,原告は,「つゝみ」が普通名称の略称又はその産地を平仮名で表示するのみで,そもそも自他商品識別機能又は商品の出所表示機能を発揮するものではない旨主張する。

 しかしながら,前記認定のとおり,堤人形の製作業者は,ごく限られているところ,被告は,「つゝみ」との文字をその製作にかかる堤人形の下部に刻印し,あるいは包装紙に「つつみ」との文字の入ったゴム印を押捺したり同様のシールを貼付しているものであるから,いずれも容易に認識可能であり,これらの文字は,普通名称の略称やその産地の表示としての機能を超えて,被告の製作する土人形を他の土人形と識別し,その出所を示すという格別の意図及び機能をもって表示していることは,明らかである。


(3) また,原告は,「つゝみ」の文字自体が普通名称の略称又は指定商品の産地表示として一般名称化している旨主張する。


 しかしながら,前記認定のとおり,堤人形は,宮城県指定伝統工芸品であり,しかもその製作業者が原告及び被告に限られている以上,「つゝみ」との文字が堤人形の略称としても,また,指定商品の産地表示としても一般名称化しているとまでは認められない。


(4) なお,原告は,本件商標が自他商品識別機能を発揮せず,本来,商標法3条1項3号に該当して登録を受けることができない商標であった旨主張して,その有効性を争うもののようである。


 しかしながら,上記のような主張を根拠とする商標無効審判の請求は,商標権の設定登録の日から5年を経過した後にはできない(商標法47条1項)ところ,本件商標は,平成3年11月29日,設定登録され,原告による本件商標の無効審判請求は,平成20年3月10日,商標法47条の規定により成り立たないものとした審決が確定している(甲15,17)。


 したがって,本件商標の不使用を理由としてその取消しを求める本件においては,商標法36条1項3号を理由として本件商標の有効性を争うことはできず,原告の上記主張は,それ自体失当である。


(5) 更に,原告は,本件商標が商標法3条2項により登録されたものであるから,登録商標の使用と認められる範囲は通常より狭いと解されるところ,被告が「つゝみ」あるいは「つつみ」の平仮名文字を縦書きにし,同文字に方形又は楕円形の枠を付け,「つ」の左横に点を付けるなどしていることから,その使用方法が登録商標と社会通念上同一と判断されない旨主張する。


 しかしながら,被告の使用方法が原告主張のとおりであることは,前記認定のとおりであるところ,その使用が本件商標と社会通念上同一と認められることも前記説示のとおりであるほか,商標登録の根拠法条により登録商標の使用と認められる範囲について原告主張のように広狭の差を設ける合理的な理由もない。


(6) 以上のとおり,被告の本件商標の使用の事実を争う原告の主張はいずれも理由がなく,他に,被告が本件商標を使用していたとの前記認定判断を妨げる証拠はない。


3 結論

 以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。