●平成21(ワ)1652 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟

 本日は、『平成21(ワ)1652 損害賠償請求事件 特許権 民事訴訟 平成22年02月18日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100219091529.pdf)について取り上げます。


 本件では、発明者の認定についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 達野ゆき、裁判官 北岡裕章)は、


『(2) 原告P1の氏名表示について

 前提事実(4)のとおり,被告各出願に係る願書の発明者欄には,原告P1の氏名が記載されていないが,原告P1は,このことをもって,被告各出願において,本件作業の結果が,あたかも被告P2及び同P3のみの研究成果であるかのように盗用されたと主張する。


 そこで,以下,原告P1が被告各出願に係る発明の発明者(共同発明者を含む。以下同じ。)に該当するかについて検討する。


ア発明者

 「発明」とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項),特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない(同法70条1項)。


 したがって,発明者とは,特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想について,その創作行為に現実に加担した者ということになる。


 そこで,原告P1が行った本件作業に,特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想の創作行為部分が含まれているかについて,検討を加える。


 ・・・省略・・・


エ被告各出願に係る発明の発明者


(ア) 前記イ,ウからすれば,本件マウス抗体は,被告出願1に係る発明そのもの,あるいは被告出願2に係る発明の出発点であって,特許請求の範囲の記載から認められる技術的思想の実現に不可欠なものといえるから,本件マウス抗体を取得することは,被告各出願に係る発明の創作行為部分に該当すると認められる。


 そして,本件マウス抗体は,原告P1が本件作業の中で取得したものであり,同作業においては,本件共同研究における抗体作製の責任者として携わっていることや,最初のキメラ化,ヒト化候補の選択は,公知技術を利用したとはいえ,一定程度の原告P1の裁量が介在していることが窺えること,抗体の絞り込みにはP3法の貢献が大きかったとはいえ,それだけで,最終的な選択を行ったわけではなく,原告P1を含めた共同研究の参加者の意見を集約して選択が行われたことなどの事情(甲7の1〜4,甲8の1〜4,乙8,弁論の全趣旨)も併せ考えると,原告P1は,被告各出願に係る発明の発明者の1人であると認められる。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。