●今年出された知財判決で最も気になった特許事件

 昨年は(http://d.hatena.ne.jp/Nbenrishi/20081229)、「今年出された知財判決で最も気になった特許事件」として、

●『平成19(ワ)22449 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権「ホースリール事件」平成20年03月31日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080403130354.pdf)を取り上げました。


 今年は、2/19(http://d.hatena.ne.jp/Nbenrishi/20090219)の日記で取り上げた、

●『平成20(ネ)10065 特許権侵害差止請求控訴事件 特許権 民事訴訟「電話番号情報の自動作成装置事件」平成21年02月18日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090218170611.pdf)

 になるかと思います。


 この電話番号事件の知財高裁控訴審では、請求項中の「構成要件Cの「接続信号中の応答メッセージ」の意義を実施例に限定解釈をした一審の東京地裁判決である、●『平成19(ワ)32525 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟「電話番号情報の自動作成装置」平成20年07月24日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080725101613.pdf)

 の判断を取り消しています。


 そこでもコメントしましたが、●『平成19(ワ)22449 特許権侵害行為差止等請求事件 特許権「ホースリール」平成20年03月31日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080403130354.pdf)では、本発明の技術的思想を考慮して実施例に限定せずに侵害を認めましたが、この電話番号の控訴審事件でも、発明の技術的思想等から実施例の記載に限定せずに侵害が認容されています。


 このような広めのクレーム解釈がなぜ出てきたのと考えると、その一つとして、

●『平成18(行ケ)10563 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「感光性熱硬化性樹脂組成物及びソルダーレジストパターン形成方法」平成20年05月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080530152605.pdf)

 にて示された補正の判断基準である、

「願書に最初に添附した明細書又は図面に記載した事項の範囲内」とは,当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は,「明細書又は図面に記載した事項の範囲内」においてするものということができるというべきところ,上記明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項は,必ずしも明細書又は図面に直接表現されていなくとも,明細書又は図面の記載から自明である技術的事項であれば,特段の事情がない限り,「新たな技術的事項を導入しないものである」

 とのバランスがあるのではないかと思います。


 では、よいお年を!