●平成21(行ケ)10177 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10177 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年12月17日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091221100853.pdf)について取り上げます。


 本件は、不使用を理由とする商標登録の取消審判の棄却審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、被告による本件商標使用の有無についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 森義之、裁判官 澁谷勝海)は、


『2 被告による本件商標使用の有無について

(1) 証拠(甲3の1・2,4〜11)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。

ア 被告の100%子会社である株式会社エー・エム・シーは,北海道恵庭市において「オートハローズ恵庭店」の名称で自動車用品の販売を行っている。


イ 株式会社エー・エム・シーは,平成17年11月ころ,「オートハローズ恵庭店」の平成17年11月3日(木)から同年11月13日(日)までのセールの広告(甲11。以下「本件広告」という。)を,新聞折込みで配布した。


ウ 本件広告の右上角には,下記のとおり,正方形の緑地内の上部に「手の指を2本突き出している手首の図」(本件商標の図形部分と同じ図)が白抜きで描かれ,その下部に黒色で「オートハローズ」の文字が記載され,その下に横長赤地の長方形内の上部に白抜きで小さく「AUTO」と記載され,その両側に白抜きで横線が描かれ,下部に「AUTO」の文字よりもはるかに大きく白抜きで「HELLO!!ES」の文字が記載されている。


エ そして,上記ウの標章の下に,少し間隔を置いて,「セール期間」「11/3(木)→11/13(日)」「オートハローズ/恵庭」などと記載されている。


オ また,本件広告には,「カーナビゲーション装置」,「DVDプレーヤー」及び「スピーカー」といった商品の写真とともに各商品の品番,価格等が表示されている。それらの商品の写真には,「SANYO」,「JVC」,「carrozeria」,「macAudio」等の製造元の表示がされている。


(2) 上記(1)の認定事実によれば,被告の100%子会社である株式会社エー・エム・シーは,本件取消審判請求の予告登録日たる平成20年7月31日の前3年以内に,その広告に,上記(1)ウで認定した標章(以下「本件使用標章」という。)を使用したものと認められる。


(3) そこで,本件使用標章が本件商標と社会通念上同一と認められるかについて判断する。

ア 本件商標は,「手の指を2本突き出している手首の図」の下に,「ハローズ」と記載し,その下に,小さく「AUTO」と記載され,その両側に横線が描かれ,さらにその下に「AUTO」の文字よりもはるかに大きく「HELLO!!ES」の文字が記載されている。


イ 本件商標を,本件使用標章と対比すると,「手の指を2本突き出している手首の図」,及び下部に,小さく「AUTO」と記載され,その両側に横線が描かれ,さらにその下に「AUTO」の文字よりもはるかに大きく「HELLO!!ES」の文字が記載されている点は同一である。


 もっとも,本件商標では,「手の指を2本突き出している手首の図」の下に「ハローズ」と記載されているのに対し,本件使用標章では,この図の下に「オートハローズ」と記載されている点が相違する。


 しかし,本件使用標章の「オートハローズ」は,本件商標の「ハローズ」の文字をそのまま含んでいる上,証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば,これらの文字の書体は同一であると認められる。また,本件商標は,「ハローズ」の文字の下に「AUTO」と記載されているところ,この「AUTO」からは,「オート」の称呼を生ずるものと認められるから,本件使用標章の「オート」の部分と称呼において一致する。


ウこれらのことからすると,本件商標と本件使用標章は,商標法50条1項にいう社会通念上同一と認められるというべきである。


(4) 次に,本件使用標章の使用が本件商標の指定商品についての使用といえるかについて判断する。


ア 上記(1)認定のとおり,本件広告には,「カーナビゲーション装置」,「DVDプレーヤー」及び「スピーカー」といった商品の写真とともに各商品の品番,価格等が表示されているから,本件商標の指定商品の一つである「電気通信機械器具」についての広告であるということができ,上記(1)認定のとおり,その広告の右上角に本件使用標章が付されているのであるから,本件使用標章の使用は,本件商標の指定商品についての使用ということができる。


イ この点について原告は,?本件広告の上記各商品の写真には,固有の書体からなる「SANYO」,「JVC」,「carrozeria」,「macAudio」等の製造業者の商標が併記されているところ,これらは明らかに当該商品の出所を表す製造者の商品商標と認識されるものである,?一方,本件広告の右上角に表示された商標は,当該新聞折り込み広告主であり,かつ,掲載商品を取り扱う小売等役務の商標として認識されるものである,と主張する。


 しかし,一つの商標が小売等役務の商標として使用されるとともに,商品についても使用されているということはあり得るのであって,本件使用標章が,小売等役務の商標として使用されているからといって,商品について使用されていないということはできないというべきである。


 また,上記(1)認定のとおり,本件広告の商品の写真には,「SANYO」,「JVC」,「carrozeria」,「macAudio」等の製造業者の商標が付されているが,一つの商品に複数の商標が使用されるということも妨げないのであるから,本件広告の商品の写真にこれらの製造業者の商標が付されているからといって,本件使用標章がこれらの商品について使用されていないということはできないというべきである。


ウ また,原告は,小売業者がその業務に係る小売・卸売に使用する商標の保護制度を導入するため「意匠法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第55号)が平成19年4月1日より施行されていることや同改正法の附則には施行前からの使用を保護するために「継続的使用権」が規定されていることを主張するが,同改正法は,「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を商標法の指定役務として保護することとしたものであり,また,「継続的使用権」は,それに伴い,同改正法の施行前からの使用を保護するためのものであって,本件使用標章の使用が本件商標の指定商品についての使用ということができるかどうかに関する上記判断を左右するものではない。


(5) 以上のとおり,被告の100%子会社である株式会社エー・エム・シーは,本件取消審判請求の予告登録日たる平成20年7月31日の前3年以内に,その広告に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標(本件使用標章)を,取消審判請求に係る本件商標の指定商品のうちの一つである「電気通信機械器具」について使用したものと認められるところ,弁論の全趣旨によれば,被告は,株式会社エー・エム・シーに対し,本件商標について通常使用権を設定しているものと認められる。


 そうすると,本件取消審判請求を認めなかった審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は採用できない。

3 結論

 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。