●平成20(行ケ)10445審決取消請求事件 特許権「薬剤検索システム」

Nbenrishi2009-08-30

 本日は、『平成20(行ケ)10445 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「薬剤検索システム」平成21年08月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090828113146.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取り消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、特許請求の範囲における「検索情報」の用語についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、


『イ原告の主張について

(ア) 原告は,本願発明の「検索情報」につき,患者が入手することのできる情報であって,商品名もこれに該当するが,商品名が不明の場合は外観情報に限られると主張するので,以下検討する。


a 特許請求の範囲の記載

 本願発明の「検索情報」に関し,請求項1には,前記第2の2のとおり,「各薬剤に関する剤形,色,識別コード等の検索項目毎の検索情報」との規定があるが,これ以上に「検索情報」を限定する規定は存在しない。


b 発明の詳細な説明の記載

(a) 本願発明の「検索情報」に関し,念のため,本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌するに,本願明細書には,以下の記載及び図示がある。図面は,それを引用する明細書の記載に適宜併記する。


 ・・・省略・・・


(b) 上記(a)のとおり,本願明細書の発明の詳細な説明には,従来の検索システムに関し,医師,薬剤師等の薬剤に関する専門家を対象としたものであり,誰でも容易に利用することができるものではなかった旨の,本願発明が病院,診療所等の医療機関によって処方され患者に調剤される薬剤をその薬剤自体が主として外観に有している情報(外観情報)に基づいて特定するための検索システムに関するものである旨の,検索項目に関し,薬剤の外見から判別される情報であって利用者が把握可能な薬剤の剤形,包装形態,色彩,大きさ,付されている記号,におい等を検索項目として設定することができる旨の記載がある。


 しかしながら,他方で,本願明細書の発明の詳細な説明には,本願発明の利用者に関し,医療関係者にとっても容易に利用することができる旨の,同発明の用途に関し,医師や薬剤師が薬剤に関する詳細な情報を調べることができ,処方時又は調剤時に安全性を確認したり,患者に対して薬剤の使用方法や副作用について説明したりするときに用いることができる旨の,検索項目に関し,対象疾患名,成分,薬価,薬効分類等も設定することができる旨の記載がある。


 そうすると,仮に本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌したとしても,本願発明の「検索情報」を,患者が入手することのできる情報であって,商品名が不明の場合は外観情報に限られると解釈することはできないといわざるを得ない。


c 上記a及びbのとおり,本願発明の「検索情報」を限定して解釈すべき旨の原告の上記主張は,特許請求の範囲の記載に基づくものとはいえず,また,仮に本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌したとしても,そのように解釈することはできないから,失当というべきである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。