●平成21(行ケ)10046 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10046 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「切削方法」平成21年08月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090826102735.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審決の取り消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、審判における周知例の追加が、請求の理由の要旨変更に当たるか否かの判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 杜下弘記)は、


『(2) 手続上の瑕疵の有無

ア 原告は,本件発明の認定に係る手続に瑕疵があると主張する。
イ 証拠(甲23,24,30)に弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。


(ア) 被告は,本件特許を無効とするとの審決を求め,その理由として,本件発明は,本件原出願の出願前に頒布された刊行物である引用例1及び2並びに周知例1ないし12をもとに,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであると主張した。


(イ) 平成20年6月24日,本件訂正前の発明に係る本件特許を無効とする旨の前審決がされたが,原告が訂正審判を請求したため,同年9月29日差戻決定がされ,再度特許庁において審理が行われることになった。


(ウ) 被告は,平成20年11月14日,弁駁書とともに甲23及び甲24を提出した。被告は,上記各証拠を「半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と,該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段」を備え,「半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ,該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され」,そのストリートを1つのブレードにより切削するものが,周知技術であることを示すために,提出したものである。


(エ) 平成21年1月22日実施された口頭審理において,原告は,「ウエハの表面を撮像する撮像手段を有し,アライメント手段によってストリートを検出し,アライメント手段によって検出されたストリートを1つのブレードによって切削すること」が周知であることを認めた上,甲24のアライメント手段はすべてのストリートを検出するものであるが,かかる技術が周知とまでは認められない旨陳述した。


(オ) 本件審決は,本件発明が,切削対象のすべてのストリートを検出するものではないとの前提で,相違点に係る,切削対象のストリートを検出する手段が,甲23及び甲24に見られるごとく周知であること,すべてのストリートを検出する点が少なくとも甲24に記載されていることを認定した。


ウ 上記認定のとおり,本件審決は,甲24について,公知例としてではなく,周知技術の認定として用いたものである。周知技術が存在する事実を追加的に主張することや,その事実を立証する証拠を提出することは,特許を無効にする根拠となる事実を変更するものとはいえないから,請求の理由の要旨変更に当たるとはいえない。


エ そうすると,当事者が申し立てない理由についての審理に相当するものとは認められず,本件は,特許法153条2項に基づく職権による無効理由が通知されるべき場合には当たらない。


 また,本件審決は,被告が無効審判手続において主張した事実及び証拠に基づいて無効理由を構成したことが認められるから,職権審理の裁量権を発動するまでもない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。