●平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等請求事件 東京地裁

 本日は、『平成19(ワ)27187 特許権侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「テレビジョン番組リストのユーザーインタフェース」平成21年07月15日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090721145255.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許権侵害差止等請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、分割出願とその原出願とにおける同一の用語の解釈の点で参考になるかと思います。


つまり、東京地裁(民事第29部 裁判長裁判官 清水節、裁判官 菊池絵理、裁判官 岩  慎)は、


『キ 被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。


 しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。


 したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。


 なお,被告は,本件特許の登録後に関連で再分割出願された2つの特許出願の経過についても主張するが,本件特許とは異なる特許出願における「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈に係る主張であり,上記と同様の理由により,これを採用することはできない。』

 と判示されました。


 私の記憶では、本判決とは逆に、つまり被告の主張のように、分割出願とその原出願とにおける同一の用語については、同意味のものとして解釈すべき、とした判決があったような記憶がするのですが、後で、調べてみます。