●平成20(行ケ)10286 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成20(行ケ)10286 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟有機装置のための透明コンタクト」平成21年06月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090701140521.pdf)について取り上げます。


 本件は、サポート要件違反を拒絶理由とする拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、サポート要件についての判断基準と、外国におけるサポート要件の充足との関係についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、


1 取消事由1(サポート要件についての判断の誤り)について

(1) 特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定するいわゆるサポート要件に適合するものであるか否かについては,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,発明の詳細な説明に,当業者において,特許請求の範囲に記載された発明の課題が解決されるものと認識することができる程度の記載ないし示唆があるか否か,又は,その程度の記載や示唆がなくても,特許出願時(優先権主張があるときは優先日当時)の技術常識に照らし,当業者において,当該発明の課題が解決されるものと認識することができるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。


 ・・・省略・・・


(5) ちなみに,原告は,「欧米の両庁における各審査手続においてサポート要件を充足するとされた内容と同一の内容の本願明細書につき,日本語であればサポート要件を充足しないということは考えられないし,日本語の微妙な読み方いかんによって同要件の適合性の有無が左右されるのは相当でない」と主張するが,外国語特許出願において,サポート要件の判断の対象となる明細書は,当該外国語特許出願に係る国際出願日における明細書の翻訳文である(平成14年法律第24号による改正前の特許法184条の6第2項)から,欧米の両庁における各審査に付された明細書と本願明細書とが同一の内容のものである旨をいう原告の上記主張は,両者がサポート要件の充足性の判断の対象たる明細書として完全に同一のものであるという趣旨であれば,その前提を誤るものとして失当であるといわざるを得ない。


 また,「日本語の微妙な読み方いかんによって同要件の適合性の有無が左右されるのは相当でない」との主張も,上記説示したところに照らせば,これを採用することができないというべきである。


 この点に関し,原告は,「発明の詳細な説明に記載された事実が何であるかを認定するための間接事実として,欧米の両庁における対応特許の付与状況を主張するものである」とも主張するのであるが,上記のとおり,欧米の両庁における各審査に付された明細書と本願明細書がサポート要件の充足性の判断の対象たる明細書として完全に同一のものということはできないから,仮に,本件出願に対応する欧米の特許出願に対して特許が付与されているとしても,そのことをもって,請求項1の記載がサポート要件を充足するものと認めることはできないとの前記判断を左右するものではない。


 さらに,原告は,「特許協力条約に基づく国際出願が主要国の国内官庁の手続に移行した場合,当該主要国の国内官庁における判断は,重要な参酌要素とすべきである」と主張するが,以上説示したところに照らせば,原告のこの点に関する主張も採用することができないことは明らかである。


2 結論

 以上の次第であるから,本件出願に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件を充足しないといわなければならない以上,明確性の要件について判断するまでもなく,本件審決の取消しを求める原告の請求は棄却されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。