●平成20(ワ)13852 実用新案実施料 実用新案権 大阪地裁

 本日は、『平成20(ワ)13852 実用新案実施料 実用新案権 民事訴訟 平成21年02月10日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090212105357.pdf)について取上げます。


 本件は、職務考案の補償として実施料相当額の不当利得金の支払を求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、職務考案の成立についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第21民事部 裁判長裁判官田中俊次 裁判官 西理香、裁判官 北岡裕章)は、


『1 本件は,被告の従業員であった原告が,被告在職中にその業務の一環として考案した登録第3053741号の実用新案登録に係る考案(本件考案)について,被告が原告に無断で本件考案を実施していると主張して,不当利得に基づき,その間の実施料相当額の支払を求めたものと解される。


2 原告主張の請求の原因事実中,原告が登録第3053741号の実用新案登録をしたこと,本件考案が原告が被告の従業員として電気関係の保守安全を業務としていた際に,その業務の一環として考案したものであることは,当事者間に争いがない。


3 しかし,原告は,被告が,原告の主張する平成10年8月26日から同20年8月25日までの間,本件考案を実施していることについて何ら立証せず,本件全証拠をもってしても,上記実施の事実を認めるに足りない。


4 この点をしばらくおき,仮に被告が上記期間において本件考案を実施していたとしても,上記のとおり,本件考案が,原告が被告の従業員(電気主任技術者)として電気関係の保守安全を業務としていた際に,その業務の一環として考案したものであることは原告が自認するところであるから,本件考案は,従業者が使用者の業務範囲に属し,かつ,その考案をするに至った行為がその使用者における従業者の現在又は過去の職務に属する考案であることが明らかである。


 したがって,実用新案法11条3項,特許法35条1項(平成16年法律第79号による改正前のもの)により,使用者である被告は,本件実用新案権について通常実施権を有する。


 そうすると,被告は本件考案を適法に無償で実施することができたのであって,これにより被告が何らかの利得を得たとしても,その利得は法律上の原因に基づくものであるから,不当利得とならないことが明らかである(民法703条)。


 原告は,発明の内容が会社の業務に属するもので,研究,開発に携わっていない原告のような電気主任技術者が新しい機能の自動供紙機を自発的に考案した場合,業務発明といい,従業員の自発性によるもので,会社に例えば就業規則に特許の権利を受けるような定めがあっても無効であるなどと主張するが,独自の見解であって採用することができない。


 また,原告は,被告が上記通常実施権を放棄したかのような主張をするが,同事実を認めるに足りる証拠はない(原告の挙げる被告宛の平成10年5月26日付けの内容証明郵便〔甲5の1〕には,「平成9年実用新案第1724号(判決注・本件考案の出願番号)については,4月11日の再退職勧告に依り将来の利益を会社は放棄した事となります。」との記載があるが,原告の一方的通告にすぎず,これにより被告が上記通常実施権を放棄したことにはならない。)。


5 原告のその余の主張をしん酌しても,上記判断は左右されない。


6 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。