●平成7年に出された知財事件の最高裁判決

 裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている知財事件の最高裁判決で、平成8年に出されたものはないようですので、本日は、平成7年に出された知財事件の最高裁判決1件について、下記の通り、簡単に紹介します。


●『平成6(行ツ)83 審決取消 実用新案権 行政訴訟「磁気治療器事件」平成7年03月07日 最高裁判所第三小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/C78E2BFBA41E201F49256A8500311E18.pdf)


 ・・・『一 原審の適法に確定した事実によれば、被上告人は、名称を「磁気治療器」とする考案についての実用新案登録を受ける権利を有限会社日本電磁波治療器研究所と共有し、右考案につき共同で実用新案登録出願をしたが、拒絶の査定を受けたため、右研究所と共同して右査定に対する審判を請求し、請求が成り立たない旨の審決がされたところ、被上告人は、単独で右審決の取消しを求める本件訴えを提起したものである。


  原審は、被上告人が単独で提起した本件訴えも適法であるとして、本案につき判断し、右審決を取り消した。


 二 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。


  実用新案登録を受ける権利の共有者が、その共有に係る権利を目的とする実用新案登録出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し、請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に、右共有者の提起する審決取消訴訟は、共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解すべきである最高裁昭和五二年(行ツ)第二八号同五五年一月一八日第二小法廷判決・裁判集民事一二九号四三頁参照)。


 けだし、右訴訟における審決の違法性の有無の判断は共有者全員の有する一個の権利の成否を決めるものであって、右審決を取り消すか否かは共有者全員につき合一に確定する必要があるからである。実用新案法が、実用新案登録を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは共有者の全員が共同で請求しなければならないとしている(同法四一条の準用する特許法一三二条三項)のも、右と同様の趣旨に出たものというべきである。


  そうすると、本件訴えを適法とした原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響することが明らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、前記説示に照らせば、被上告人の本件訴えは不適法として却下すべきである。


 よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、九六条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。』、等と判示した最高裁判決。