●平成13年に出された知財事件の最高裁判決(3)

 本日は、平成13年に出された知財事件の最高裁判決で、裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている残りの最高裁判決3件について、下記の通り、簡単に紹介します。


●『平成12(オ)929等 著作権確認等請求事件 著作権 民事訴訟円谷プロ事件」平成13年06月08日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/543C6678D69CACBB49256DC700268057.pdf

 ・・・『我が国に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき,民訴法の不法行為地の裁判籍の規定(民訴法5条9号,本件については旧民訴法15条)に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,原則として,被告が我が国においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りると解するのが相当である。けだし,この事実関係が存在するなら,通常,被告を本案につき応訴させることに合理的な理由があり,国際社会における裁判機能の分配の観点からみても,我が国の裁判権の行使を正当とするに十分な法的関連があるということができるからである。』、また、『ある管轄原因により我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定される請求の当事者間における他の請求につき,民訴法の併合請求の裁判籍の規定(民訴法7条本文,旧民訴法21条)に依拠して我が国の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには,両請求間に密接な関係が認められることを要すると解するのが相当である。けだし,同一当事者間のある請求について我が国の裁判所の国際裁判管轄が肯定されるとしても,これと密接な関係のない請求を併合することは,国際社会における裁判機能の合理的な分配の観点からみて相当ではなく,また,これにより裁判が複雑長期化するおそれがあるからである。』、等と判示した最高裁判決。


●『平成12(受)222 著作権侵害差止等請求事件 著作権 民事訴訟「カラオケ装置リース事件」平成13年03月02日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/8B43627B13EF00C349256AD4002681FA.pdf

 ・・・『2 カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負うものと解するのが相当である。


 けだし,(1)カラオケ装置により上映又は演奏される音楽著作物の大部分が著作権の対象であることに鑑みれば,カラオケ装置は,当該音楽著作物の著作権者の許諾がない限り一般的にカラオケ装置利用店の経営者による前記1の著作権侵害を生じさせる蓋然性の高い装置ということができること,(2)著作権侵害は刑罰法規にも触れる犯罪行為であること(著作権法119条以下),(3)カラオケ装置のリース業者は,このように著作権侵害の蓋然性の高いカラオケ装置を賃貸に供することによって営業上の利益を得ているものであること,(4)一般にカラオケ装置利用店の経営者が著作物使用許諾契約を締結する率が必ずしも高くないことは公知の事実であって,カラオケ装置のリース業者としては,リース契約の相手方が著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことが確認できない限り,著作権侵害が行われる蓋然性を予見すべきものであること,(5)カラオケ装置のリース業者は,著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたか否かを容易に確認することができ,これによって著作権侵害回避のための措置を講ずることが可能であることを併せ考えれば,上記注意義務を肯定すべきだからである。』、等と判示した最高裁判決。


●『平成11(受)955 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟ときめきメモリアル」平成13年02月13日 最高裁判所第三小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/5FE75596B471FE4349256AD400268270.pdf

 ・・・『本件ゲームソフトの影像は,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものとして,著作権法2条1項1号にいう著作物ということができるものであるところ,前記事実関係の下においては,本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,被上告人の有する同一性保持権を侵害するものと解するのが相当である。


 けだし,本件ゲームソフトにおけるパラメータは,それによって主人公の人物像を表現するものであり,その変化に応じてストーリーが展開されるものであるところ,本件メモリーカードの使用によって,本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに,その結果,本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され,ストーリーの改変をもたらすことになるからである。』、等と判示した最高裁判決。