●昭和45(行ツ)32 特許権 行政訴訟 最高裁判所第一小法廷

 本日は、昨日取上げた『平成19(行ケ)10315 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「旋回式クランプ」平成20年11月12日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081113150955.pdf)中で引用されていた最高裁判決である、『昭和45(行ツ)32 特許権 行政訴訟 昭和51年05月06日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070314093832.pdf)について取上げます。


 つまり、本最高裁判決の内容は、次の通りです。


『                  主 文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

                   理 由
 上告代理人中松澗之助、同熊倉巖、同中村稔、同復代理人村松俊夫、上告補助参加代理人長島安治、同山崎行造の上告理由一及び二について


 特許の無効審判の係属中に当該特許の訂正審判の審決がされ、これにより無効審判の対象に変更が生じた場合には、従前行われた当事者の無効原因の存否に関する攻撃防禦について修正、補充を必要としないことが明白な格別の事情があるときを除き、審判官は、変更されたのちの審判の対象について当事者双方に弁論の機会を与えなければならない、と解すべきであり、これと同旨の見解のもとに、本件特許の無効の審判手続においては、審判請求人である被上告人らに対し、訂正の審判の審決により変更されたのちの審判の対象はついてあらためて無効事由の主張立証をする機会を与える必要があつたのにこれを怠つたのは、審決に影響を及ぼすべき性質の審判手続上瑕疵庇があつたものというべきである、とした原審の認定判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。


同三について


 行政処分に瑕疵がある場合においても、その瑕疵が当該処分の結果に影響を及ぼさないときには、当該処分の取消原因とならないものと解すべきであるから、行政処分取消訴訟において、当該処分は一般的にみて行政処分の結果に影響を及ぼすような性質を有する手続上の瑕疵が認められる場合でも、その瑕疵が当該処分の結果に影響を及ぼさないことが明らかであると認められる特別の事情があるときは、裁判所は、右瑕疵は当該処分の取消原因とならないものと判断しなければならないこととなる。そして、この理は、審決取消訴訟において審決に審判手続上の瑕疵があると認められる場合においても、原則として妥当するものである。


 しかしながら、審決取消訴訟においては、審判手続において審理判断されなかつた公知事実を主張することは許されず、したがつて、裁判所の審理判断もこれに及ばないこととなるのであるから(最高裁昭和四二年(行ツ)第八二号同五一年三月一〇日大法廷判決参照。所論引用の判例は、右判決により変更されたものである。)、審判手続上の瑕疵が審決に影響を及ぼすかどうかの判断が、審判手続において審理判断されず、したがつて審決取消訴訟において審理判断することのできない公知事実にかかわるものである場合には、裁判所は、当該瑕疵が具体的に審決に影響を及ぼすかどうかについての判断をすることができず、当該瑕疵が一般的に審決に影響を及ぼすべき性質を有するものであるかどうかにより、審決取消の原因となる瑕疵かどうかを決しなければならない筋合である。


 本件についてこれをみるに、原審が確定した事実によれば、被上告人らは、本件特許発明は公知技術から容易に推考することができるもので旧特許法(大正一〇年法律第九六号)五七条一項一号に該当すること等を理由として、本件特許の無効審判の請求をしていたものであるところ、本件無効審判においては、訂正審判の審決により変更されたのちの審判の対象についてあらためて被上告人らに対し無効事由の主張立証をする機会を与える必要があつたのに、これを怠つた手続上の瑕疵があり、しかも、この瑕疵は一般的に審決に影響を及ぼす性質を有する瑕疵というべきものであることは、前述のとおりである。


 ところで、右審判手続において、被上告人らが無効事由の主張立証の機会を与えられていたとすればいかなる主張立証がされ、しかも、それが具体的に審決にいかなる影響を及ぼしたかについて、本件審決取消訴訟においてこれを判断することは、結局、審判手続において審理判断されていない公知事実について審決取消訴訟においてこれを審理判断することに帰着するものであり、これが許されないものであることは前述したとおりである。


 したがつて、本件無効審判手続における前記瑕疵は、それが一般的に審決に影響を及ぼすような性質のものと認められる以上、被上告人らが右審判手続において主張立証の機会を与えられたならばいかなる主張立証をすることができ、それが審決の判断を動かすに足る有効適切なものかどうかを問うまでもなく、本件審決の取消原因になるものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、右と異なる見解に立つて原判決を非難するものであつて、採用することができない。


 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官岸上康夫
裁判官藤林益三
裁判官下田武三
裁判官岸盛一
裁判官団藤重光』